第35回 有権者の半分が外国人になる未来

この対談について

国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。

第35回 有権者の半分が外国人になる未来

安田

日本人の結婚観がグローバル化したのか、国際結婚が増えているそうです。結果、国内で生まれる子どものうち、24人に1人はハーフの子だと。


酒井

そうらしいですね。移民も増えていますし、出生率を考えると、将来的に外国人・ハーフの方の割合がどんどん増えていくでしょうね。

安田

なるほど。日本には移民の受け入れに反対する人も多いですが、この流れはもう止まらないでしょうね。 


酒井

ええ。そして、止めることが不可能なのであれば、移民側もそれを受け入れる側も、互いの価値観を理解する必要がありますね。

安田

トラブルなく過ごしてもらうためには、実際どれくらいの相互理解が必要なんですかね。現実的に考えて、「日常会話を日本語でできる」くらいのレベルがなければ、理解も進まないように思うんですが。


酒井

もちろん言語スキルも大切ですが、一番重要なのは「宗教観」の理解だと思います。世界的に見れば一神教、「神はひとつ」という考え方が一般的ですが、日本はあらゆるものに神様が宿っていると考える。

安田

「八百万の神」ですね。確かに世界的に考えれば、これは異端の宗教観なのかもしれない。


酒井

ええ。ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も、すべて一神教ですから。特にイスラム教の方は抵抗を覚えるんじゃないでしょうか。

安田

そうなんですね。ちなみにイスラム教の人は、キリスト教やユダヤ教に抵抗は感じないんですか? 同じ一神教だからいいんですかね。


酒井

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の3つは、元を正せば同根ですから。そういう意味で認めざるを得ないわけですが、仏教はそのラインと完全に別の宗教なので。

安田

なるほど。そういう事情があるからこそ、移民する側も受け入れる側も、まずそれぞれの「宗教観」を理解することが重要だと。


酒井

ええ。もちろん宗教観だけでなく、文化や道徳、そして安田さん仰るように言語スキルも学ぶ必要はあります。本当にまず取り組むべきは、「近い将来、日本のかなりの割合が外国人・ハーフの方になる」という事実を受け入れることだと思いますが。

安田

そうですよね。そのための準備はなるべく早く始めた方がいい。「有権者の半分以上が外国人」という状況になることも考えられるわけで。


酒井

そうなんですよ。一方、それが現実になる前に日本人から「移民排斥運動」が起こるかもしれない。

安田

なるほど。その状態を避けたい人たちが移民を追い出そうとすると。ちなみにその運動はどういうキッカケで起こるんでしょうね。


酒井

先ほど話していた「宗教観の違い」かもしれませんし、あるいは「治安悪化」や「犯罪の増加」が火種になるかもしれません。

安田

確かに最近、「移民と地元住人のトラブル」のニュース多いですもんね。実際、自分が住む地域で問題が起きれば、心配でたまらないでしょう。とはいえ、できることなら排斥運動も治安の悪化もないままうまくいって欲しいですよね。


酒井

もちろんそうですね。ちなみに少し話が変わりますが、「LGBT」についても同じような問題が取り上げられていました。「トランスジェンダー」の男性が銭湯の女湯に入って騒ぎになった件なんですが、ご存知ですか?

安田

ああ、見ました。それはそれで複雑な問題ですよね。人間の心情的な部分だけでなく、伝統とか教育にも関わるし、それこそ宗教の戒律みたいなものも絡んでくる。


酒井

そうなんですよ。たとえば普段は「多様性を認めよう!」と言っていた人が、特定の問題に関して極端に排他的な態度をとることはよくあります。あるいは、ネガティブなニュースが増えていく過程で、「やっぱりLGBTは認められない」と意見を変えていくこともある。

安田

そうかもしれませんね。テレビやネットで見ている分にはいいけど、当事者になったときに同じ態度が取れるのか、ということもある。火の粉が降りかかる距離にいながら、「まぁ多様性の時代だからね」と受け入れられるかというと……


酒井

現実的には難しいですよね。個人的には「ルールを遵守した上で、多様性を認める」というのが大前提だと思っています。個人の心のあり方や思想は自由であっていい。でも、それに社会のルールを合わせようとしてはいけないと。

安田

同感です。誰がどんな神様に祈ってもいいし、自分の性別をどう規定してもいい。でもその考え方と社会のルールが相容れない時は、ルールの方を優先してもらうと。


酒井

ええ。逆に言えば、そのルール設定が非常に大事になってくるということですよね。そういう意味でいうと、日本の「和を以て貴しと為す」という考え方はちょっと危険なんですよね。「言わなくてもわかるでしょ?」「大人なんだから察してね」ということではなく、ちゃんとルールを設定してそれを周知しないと、想定外の問題が次々と起こるでしょう。

安田

そうですね。良い意味でも悪い意味でも、日本人は“いい加減”なのかもしれませんね。クリスマスも祝うし、結婚式はキリスト教式も神前式もある。お葬式も仏教と神道が入り混じっていますし。


酒井

そうですね。ただ、そういう風に柔軟なところがある割に、内輪意識は異常に強い。最近も大分県で、移民の人たちが「イスラム教のお墓を作って欲しい」と自治体に要求したことが問題になっていました。

安田

ああなるほど。「じゃあイスラム型のお墓も取り入れようか!」とはならず、「それはちょっと」となってしまっていると。


酒井

何か要求があった場合、とりあえず主張してみることは彼らからすると普通のことなんですね。ただ、それが日本人から見ると、「なんてわがままなことを言う人たちなんだ」という反応になってしまう。自治体も要望を言われちゃうと、対応しなきゃいけないと思いがちなので、困っちゃうんですよね。

安田

でも、こういう話は今後も至る所で出てくるでしょうね。自治体はどう対応するのがよさそうですか?


酒井

先ほどの話同様、ルールを明確化すればいいんです。そのルールに鑑みてNGなら堂々と「だめです」と言えばいい。別にすべてを受け入れる必要なんてないんですから。

安田

ああ、そうですよね。何でも受け入れていたら、本当に切りがない。まさに「ノーと言えない日本人」ですね。


酒井

そうなんです。異なる文化や思想を持つ国民同士が共生していくには、「適切なルールを決めて、正しく守る」ということが前提です。

安田

移民の問題も「いずれ、なんとかなるだろう」くらいに思っていましたが、甘かったようです(笑)。まだ、対策は間に合いますか?


酒井

そうですね。ハーフの子供たちの生まれる割合から考えると、急ぐ必要があるかもしれない。でも、まだ圧倒的に日本人の数が多いから、間に合うと思います。

 


対談している二人

酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家

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経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズライズエイト株式会社株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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