このコラムについて
小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?
と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。
第29回「静寂を楽しむことが小さなブルーオーシャン」
私語厳禁!ルールを厳格化することで人気
今回は。
喫茶店
のお話。
昔ながらの「喫茶店」というものを、
ほとんど見かけなくなりました。
日本という国では、
チェーン展開をするお店の方が
流行りますね。
そっちの方が安心なのでしょうか…。
高円寺駅から徒歩5分、
商店街のわき道を入った古い建物の2階に
「アール座読書館」という喫茶店があります。
この喫茶店は店内全体が「読書室」になっており
おしゃべり禁止のお店です。
喫茶店というと、
会話を楽しむ女性たちや、
打ち合わせをするビジネスパーソン、
中には、一人で新聞を読みながら、
タバコをくゆらすご老人もいますが、
おしゃべり禁止ではありません。
音楽喫茶の様に、
音楽を楽しむ人たちための
喫茶店でも、
大音量で音楽が流れているだけで、
おしゃべり禁止とまでは
なっていないはずです。
しかし、この「アール座読書館」さんは、
おしゃべり禁止だからこそ、
人気があるのです。
小さなブルーオーシャンを生み出しているものは何なのか?
elisandropootcarrilloによるPixabayからの画像
店内には、観葉植物やアンティーク調の机やソファ、
手作りのステンドグラス風アクリルボードなどが鎮座し、
水槽から聞こえる水音や床の軋みだけが響き渡るほど静か。
座席は9種あり、席ごとにコンセプトが異なっています。
大きな水槽が目の前に鎮座したアクアテラリウム席。
熱帯魚がゆったりと泳ぎ、
水草がゆらゆら揺れているようすを見ているだけで癒されます。
その他、万華鏡スコープや金魚鉢、
小さな鉱石博物館をイメージした席があります。
大きな声や長いお話、音が出る作業が禁止である以外は、
基本的には自由に過ごすことができます。
(混んでいなければ、席の移動も自由だとか)
開店当初は、「大きな声はご遠慮ください」と
今よりもゆるいルールだった、という
店主の渡邊太紀氏。
ところが、予想以上に静寂を求めて来る方が多く
コンセプトをもっと「静かな店」に
徹底したのだとか。
また、もう一つ。
来てくださる方にはもっと現実逃避をする時間を作ってほしい
とのこと。
渡邊氏曰く
“静かな時間のなかで過ごすことは、
自分を忙しい日常から自由にしてあげられる。
そのきっかけの一つが読書であって、
水槽を見てぼーっとしたり、
物思いにふけったりするだけでもいいんです。”
とのこと。
まさに、この「アール座読書館」さんのサービスは
コーヒーやジュースと言った飲み物ではなく、
「静かな時間」
「静かな時間」の価値は、
使っている人たちが決めるもの。
飲み物の値段が高いとか、安いとかではなく、
「静かな時間」に対価を払っているわけですから、
ファン顧客も多いと思います。
佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役
大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。