第101回「旧型機械で手間暇かかることが選ばれる小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「旧型機械で手間暇かかることが選ばれる小さなブルーオーシャン」


「持ち上げ、引っ張り合う柔道を支える柔道着」

昨年、1年延期の上で
開催された東京オリンピック。
たくさんの感動を
我々に与えてくれましたね。

当然、選手たちによる
頑張りが多くの感動を
生み出したことは言うまでも
ありません。

しかし、裏では、
たくさんの関係者、
スタッフもいらっしゃいますね。

さて、たくさんある競技の中で、
東京オリンピックでは、
金・銀・銅を合わせて
12個のメダルを獲得し、
世界で1番だった「柔道」、
さらには「柔道着」に
着目してみましょう。

皆さんは「柔道着」を
手にとって見たことは
ありますか?
柔道着はずしりと重いです。
厚い布を2枚重ねた上に、
刺し子と呼ばれる縫いが入っています。
時には体重100㌔を超す選手が持ち上げ、
引っ張りあうのが柔道着。
これほど頑丈さが求められる生地は
珍しいですね。

柔道の投げ技 一本背負いのフリー素材

もちろん、柔道着はさまざまな
スポーツメーカーで作られていますが、
大阪府柏原市に本社を置く
株式会社九櫻は国内シェア1、2を
争うトップメーカー。
創業は1918年。
100年以上の歴史を持つ会社です。
日本の柔道人口は減少しつつあるものの、
逆に海外では増加しているため、
株式会社九櫻でも海外のトップアスリートに
アプローチをしています。

とこんな話をすると、
さも立派な最新鋭機械で
作られているのではないか、
と思われますが…。

40、50年前の旧型の機械で作られているそうです。
織機が動いている間、社員さんが
生地の弾力を確認しては、
縦糸の先にぶらさがった重りを
加減するのだそうです。
部品が壊れたときは
替えがないため、近所の溶接工場で
直してもらうのだとか。

工場内には、新型の織機もあるそうで、
コンピューター制御で、織り方も設定できるそう。

それに比べて格段に手間のかかる旧型を、
なぜ使い続けるのでしょうか?

実は旧型の機械で作ると、
糸の間に不ぞろいな隙間ができるため
肌触りが柔らかく、洗ってもゴワゴワしにくい。
柔道着を織りから作っている企業は
世界で九櫻だけだそうです。

アスリートにとって、
ちょっとした感覚は大事です。
手間暇がかかっても、
その感覚を紡ぎ出すことが、
多くのアスリートに選ばれる
理由なのかもしれませんね。

 

著者の他の記事を読む

 

佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

感想・著者への質問はこちらから