第127回「後発でありながら超精密鏡面加工でオンリーワンとなったという小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「後発でありながら超精密鏡面加工でオンリーワンとなったという小さなブルーオーシャン」


「宮城から世界へ どんな形状でもナノレベルの精度で研磨 必要なコトに距離は関係ない」

宮城県仙台市の郊外利府町に
世界オンリーワン企業があると言います。
株式会社ティ・ディ・シー。

同社は金属、セラミックス、樹脂、ガラスなど
どんな素材でも、どんな形状でも
ナノレベルの精度で研磨できる
「超精密鏡面加工技術」を持つと言います。
世界で同社しかできない加工品もあるらしく、
自動車、半導体、宇宙産業の企業を中心に、
日本国内取引先は累計で3000社、
海外18カ国、100社と直接取引していると
言いますから驚きです。

ちなみに同社の従業員数は67名。
二重に驚きです。

しかし、どのようにして
世界オンリーワン企業になったのでしょう?

調べていくと
理由は4つあるよう思いました。

まずは断らない。

レンズメーカーはガラス、
金型メーカーは金属、
と研磨の世界は素材を特化するのが
普通だそうです。
同社は後発だけに、他社ができないという加工を
積極的に受け入れてきたそう。

新しい研磨技術に
それほど市場性がなくても、
断ることはなく、
たった1人の顧客でも困っているなら、
それを解決するのが同社の方針。


Jason GillmanによるPixabayからの画像

市販の装置では実現できないので、
装置を改造あるいは自作し、
治具(加工や組み立ての際、
部品や工具の作業位置を
指示・誘導するために用いる器具)も
手作りで開発。
研磨材もさまざまな材料を
組み合わせて使い、
試行錯誤を繰り返して
顧客の要求に応えてきたといいます。

2つ目は、
新技術が生まれたら、
世界中にPRする。
専門雑誌やウェブ広告、
国内外の展示会などで
積極的にアピールする。
すると、世界の顧客から
依頼が来るようになったと言います。

じつはこれが3つ目の理由でもあります。
社長である赤羽氏は、同社の技術が
海外でも通用するはずだと考え
英語版のホームページを立ち上げました。
すると、すぐにアメリカのアイオワ大学から、
レンズを磨いてほしいと注文が入る。
さらにハワイ大学から、
天文台で使う望遠鏡のレンズ研磨の話が来る。

どういうことか?
アイオワ大学もハワイ大学も近くに加工屋さんが
ないので注文をしたということ。
つまりは必要なコトに距離は関係ないということですね。

最後に人材。
社員さん67人中、50人以上が技術者。
18歳から75歳までいるそうです。
どんな難題が来ても、社員さんが
話し合いながら解決してしまう。
毎年2~3人の新卒を採用して
離職率はほぼゼロだそう。
人材に関しては、
社員さんなどに詳しい話を
聞いてみないとわかりませんが、
仕事を断らない、
国内外からの引き合い、
積極的なPRなどの
同社の方針に
響いた人材が集まってきて、
さらに誇りを持って仕事を
しているのではないか?
と予想されます。

場所や規模に左右されず、
アイデアと挑戦、努力で、
世界に近づけるという
小さなブルーオーシャンだと
思います。

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株式会社ティ・ディ・シー
〒981-0113
宮城県宮城郡利府町飯土井字長者前24-15
URL https://mirror-polish.com/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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