このコラムについて
小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?
と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。
「守りべきことは守る、変えるべきことは変えるという小さなブルーオーシャン」
少し前から流行っている「町中華」
閑散とした住宅街や田舎町にぽつんとした佇まいで何十年も続いているような、地域に根ざした大衆中華料理店のことです。決して綺麗とは思えない、油まみれの店内にも関わらず、懐かしさを感じたり、1,000円で満腹になれたりするなど、根強いファンが多いですね。
千葉県松戸市、北総線「松飛台」という駅にある「中華料理 東東(トントン)」もまた、地域に根ざした町中華の一つですが、全国どころか海外からもお客さんがやってくると言います。
一体、どんな「町中華」なのでしょうか?
高校生だった孫娘が、先代の意思を継ぎ、町中華を復活
「中華料理 東東(トントン)は、帯刀(たてわき)武次郎さんが1980年に創業した中華料理店です。帯刀さんは、「たくさんの人に、おなかいっぱいごはんを食べる幸せを味わってほしい」という想いから「東東」を開店。お店はやがて地域の人に愛されるお店となっていったそうです。
およそ40年、お店を営んできた帯刀さんにすい臓がんが発覚したのは、2020年の7月。余命3カ月と宣告されたそうです。
当時、高校3年生だった孫娘の池田穂乃花さんは、自分のことより、いつもお店のことばかりを気にしている祖父を見て、『つぶしたくないんだな』って気持ちがとても強く伝わってきたと言います。
2カ月後の2020年9月、帯刀さんは帰らぬ人となりました。
推薦で大学への進学も決まっていた池田さんは、帯刀さんの意思を継ぎ、「東東を守る!」と決め、すぐにお店の2階に引っ越してきたそうです。同時に、池田さんの幼なじみのジェンジェンさんを『私と一緒に住んで、東東で働かない?』と誘います。ジェンジェンさんも大学進学の予定でしたが、お父さまの仕事の関係で帰国する必要があったため、快諾。二人は寝食を共にしながら「東東」で働き始めます。
ここまで読まれた方は「そんな簡単にいくわけないだろう」と思っているはずです。
ご想像どおり、うまくいかなかったそうです。
池田さんがお店を継ぐと、残された従業員で料理を作るようになりました。しかし、従業員それぞれが独自のアレンジを料理に加えるようになり、帯刀さんが守り続けてきた「東東」の味からはかけ離れた、ばらつきのある味になってしまったそうです。
常連客からも「味が変わった」という指摘があり、グルメサイトの口コミ欄などにも書き込まれ、いつしか閑古鳥が鳴く日々。
お店を畳むことも考えたと言いますが、お店を守るためには、まず帯刀さんの味に戻すことを考えたそうです。
帯刀さんはほとんどの料理のレシピを残さずに亡くなってしまったため、味を復活させることはとても大変な作業だったそうで…。
帯刀さんと一緒に働いていた従業員や祖母に手伝ってもらいながら、数カ月をかけて、先代・帯刀さんの味の再現し、『先代の味』を復活。
一度離れていったお客さんも戻ってきてくれるようになったといいます。
一方、彼女たちは新規客の開拓にも積極的。デカ盛りメニューや「まんぷくセット」など、新しいアイデアで考案されたメニューをSNSで発信したことで、テレビをはじめ、メディアで取り上げられることも増えました。
真夏に従業員が熱中症になってしまった時は、翌日、箱買いしたスポーツドリンクを差し入れてくれた新しい常連客もいたそうです。
その結果、今や「東東」は全国区どころか海外からもお客が訪れ、開店時からすぐにお客が入店し、お昼前には満席必至となるお店へと変貌を遂げました。
先代・帯刀さんの味を復活させ、人気店にまで押し上げたこの2人は、「東東」の経営にもっと入り込むのか、それとも、それぞれが元々描いていた自分の夢に踏み出すのか、という人生の岐路に立っているそうです。
いずれにしても、無我夢中でお店を立て直した経験は、今後の糧になることは間違いありません。
今回は、守りべきものはしっかりと守る。変えるところはしっかりと変える。どちらも勇気のいる決断です。しかしこの若い2人がやってのけたんですから、私たちも見習うべきという小さなブルーオーシャンでした。
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中華料理 東東(トントン)
千葉県松戸市
URL https://cyu-ka-tonton.com/
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