地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第16回 実力より「ちょっと上の期待値」で、顧客満足度はアップする

前回の対談で、スギタさんが大学の学生に向けて「商品開発」を教えていらっしゃると伺いました。実際にどういった授業をされているのか、もう少し詳しくお聞きしてもいいですか?

はい、もちろん。以前した「コンセプト」と「パフォーマンス」の話なんかはしていますね。とは言え、あまり「学問」になりすぎないように、なるべく実践的なことを伝えるように心がけています。

すごくいい体験だと思いますね。というのも私は常々、学生に限らずもっと「商売体験」をした方がいいと思っていて。自分で商品を考えたり、接客したり、もっと顧客の「生の反応」に接する機会を増やすというか。

仰るとおりだと思います。だから僕も学生さんに、「普段何気なく手にしている商品が、どういう経緯で世に出たのか」を考えながら買い物するといいよって言ってます。そうすることで「商品開発」ということに血が通ってくるんだよって。

ありましたよ〜。広島レモンを使った焼き菓子を、広島駅とか広島空港で売ろうとしたんですが、全然ダメでした。何度も売り場に足を運んで、見せ方なんかもめちゃくちゃ工夫したんですけど。

そもそも広島レモンを使ったお菓子が他社からもいっぱい出ていたんですよね。ウチの商品は他社製品に埋もれてしまって、見つけてさえもらえなかった。で、「これはもう広島レモンで勝負すべきじゃないな」と判断しまして。

僕は「コンセプト=期待値」だと捉えているんですね。お客様に「期待値」を持ってもらえなければお店には来てもらえないわけで。でも期待値が高まるほど、実際に来店後にその期待値を越えられなかった場合、半端ない「がっかり感」を与えるハメになってしまうなぁと(笑)。

そうそう(笑)。でも一方で、たいして期待もせずに入ったお店で最高のパフォーマンスを受けたら、満足度はかなり高くなる。そういう「期待値」のコントロールってどういう風にすればいいのか、ずっと安田さんにお聞きしたくて…(笑)。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。