地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第39回 イチゴショートケーキの奥深さ

以前の対談で「イチゴの商品は鉄板だ」って仰っていましたよね。なかでもイチゴのショートケーキは一番の売れ筋商品だって。

かく言う私もイチゴのショートケーキが一番好きなんですけど、ただ家族も含めた周りの人で、イチゴのショートケーキを選ぶ人ってあんまり見たことがないんですよ。だからダントツに売れているっていうのがピンとこなくて。

夏イチゴというのもあるんですけどね。北海道産とか、広島で言えば県北で作られているイチゴなんですけど。ただどうしても入荷が不安定ですし、なによりちょっと酸味が強くて、甘さが弱いんです。だからその時期だけはイチゴではなく桃やメロンのショートケーキを出す、っていうお店はあると思います。

ふむふむ。ちなみにスギタさんのお店で使うイチゴの銘柄って、決まっているんですか?

どんなイチゴを使うことが多いんですか? やっぱり『とちおとめ』ですか?

ウチは変えています。上の飾りに使うイチゴはなるべく甘みがあるものにして、中に使うものは酸味が強いもの。というのも、個人的にイチゴのショートケーキの美味しさって「甘酸っぱさ」のバランスだと思っていまして。

へぇ〜、素敵ですね。とはいえイチゴショートってすごくシンプルじゃないですか。スポンジと生クリームとイチゴだけ。それなのにそんなに差が出るかなと思いきや、やっぱり一口食べれば美味しいものとそうじゃないものの差は歴然で(笑)。どこで差が出るんでしょうね?

ありますあります。生クリームって生乳から作りますけど、そうではなくてフレッシュクリーム…要は、植物性油脂を使って作ったものを使っているところもありますね。あとはコンパウンドクリームっていう乳脂と植物性脂肪をブレンドしたクリームを使っているお店も多いですし。

確かに、ふわふわだったり、ちょっと生地に食べごたえがあったり、いろいろなスポンジがありますね。ところでスギタさんにとって「一番美味しいショートケーキ」ってどのお店のものなのか、教えていただけますか?
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。