第64回 テイクアウトとイートインの両立

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第64回 テイクアウトとイートインの両立

安田

今日は、テイクアウトとイートインについて聞いてみたいと思うんです。スギタさんは両方やるお店を経営されていますよね。


スギタ

ええ。テイクアウトとイートインが両立するスタイルのお店をずっとやってきました。

安田

そうですよね。でもそれってすごく難しいんじゃないかと思うんです。そうでもないんですか?


スギタ

業態にもよりますが、例えばケーキとドリンク、パフェなどの軽食ならやりやすいんじゃないですかね。ただ料理とケーキの両立は本当にしんどいので、やめた方がいいと思います(笑)。

安田

なるほど(笑)。確かに人手も時間も取られますよね。


スギタ

ランチタイム中は完全にレストランとして回さないといけないから、その間はケーキの仕込みが一切できないんです。営業が終わったらアルコールで殺菌して、ようやくケーキの仕込みがスタートできる。

安田

ははぁ、それは大変ですね…。じゃあ、パン屋さんにカフェ併設みたいな形はどうですか?


スギタ

それは全然問題ないです。むしろ僕もやりたいくらい(笑)。

安田

そうなんですね(笑)。とはいえイートインを作ろうとすると、スペースも人手もいるじゃないですか。だからといってテイクアウトよりあんまり高い金額が取れるわけでもない。


スギタ

そうですね。500円のケーキを1,500円では出せませんから。

安田

そうですよね。そう考えると、テイクアウトだけの方が回転率もよさそうだし、効率がいいような気もして。


スギタ

間違いないです。特に少人数で運営する場合、イートインをやると全リソースが持っていかれちゃうので。ただイートインのいいところは、その空間でテーブルコーディネートができたりするので、写真映えしたりして宣伝効果が高まるんですよね。

安田

ああ、なるほど。おしゃれな店内ならSNSで拡散してもらえそうですし。テイクアウトで買って自宅でケーキを食べる時は、あまりSNSに上げようとは思わなそうですもんね。


スギタ

まさにそうなんです。お店だったらお皿やフォーク、ティーカップまで含めて世界観を演出できる。それが映える要素にもなって、拡散効果に繋がるんですよね。

安田

なるほどなぁ。ということは、イートインは利益目的というより、集客やブランディングの一環って感じですか?


スギタ

そうですね。僕が今やるなら、そっちを意識すると思います。

安田

ところで、パン屋の方では飲み物は出してないんですか? たしか以前はやっていたような記憶がありますけど。

スギタ

今はパンを買ってくれた方に無料でコーヒーをお出ししてます。でも有料のカフェメニューもやろうと思って、実際準備はできているんです。エスプレッソマシンもソフトクリームマシンもいいものを揃えて。でも練習だけで1年経ってしまって(笑)。

安田

そうなんですね(笑)。スタッフの皆さんもやりたい気持ちはあるんですか?


スギタ

そもそもスタッフの子たちからやりたいという意見が上がったんですよ。テラス席もあるし、せっかくだからサービスのコーヒーだけじゃなく、スムージーやフレンチトーストも出したい、と。

安田

やる気はあるのに始まらないってことは、やっぱり手が足りないってことなんですかね。普段の人数にプラス何人かいないと、現実的に回らないですもんね。

スギタ

まさに仰るとおりで(笑)。今の人数ではギリギリで、新しいサービスを始める余裕がなくて。

安田

以前お話したスキマバイトでもいれば、っていうところなのかもしれませんね。

スギタ

本当にそうなんです。あと1人2人いるだけで違うんですが、今やってもてんやわんやになってしまうので。とはいえスタッフのやりたい気持ちも汲んであげたいし、バランスが難しいですね。

安田

確かになぁ。でもぜひ実現してほしいです。スギタベーカリーさんのある場所ってすごく気持ちいいですしね。

スギタ

ありがとうございます。4〜5月とか特に最高なんですよ。今年こそはゴールデンウィークまでにスタートしようって言ってたんですけどね(笑)。

 


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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