地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第65回 町のケーキ屋さんが量産型ケーキと競合しない理由

先日ニュースで見て驚いたんですが、シャトレーゼが労基法違反で書類送検されたのってご存知ですか?

ええ。それで「これはスギタさんにぜひご意見をお聞きしたい」と思って。シャトレーゼといえばビジネスとしてはかなり成功しているケーキ屋さんだと思うんです。でもだからこそ大量生産しなきゃいけなくて、結果人の働き方に無理が出たのかなと。

ああ、なるほどなるほど。一方で、ピーク時に合わせて採用するとシーズンオフには人が余ってしまう、という問題もあるとも仰ってましたね。結果、少人数で回すこととなり、そのしわ寄せが既存社員にのしかかってくる。

そうなんですよね。安い店の多いエリアでは、そもそも値上げ自体が難しいし。一方で、大量に作ろうとすれば人手不足や労務管理の課題が出てくる。だから今は「安く売る」も「大量に作る」も、どちらも簡単ではない時代なんでしょうね。

そういう商売がしたければ、完全に人間が必要ないくらいの自動化が必要かもしれませんね。グリコや明治、ブルボンなどのお菓子工場みたいに、すべて機械によって作られていくような体制じゃないと成り立たない。

ふ〜む、そうなるともはやスギタさんのお店とは完全に別業態って感じですよね。そういえばシャトレーゼが近所に出店したけどお客さんが減らなかった、って話もありましたね。

なるほど、その結果も「ケーキ屋さんとは別物」ということを示しているわけですね。そうか、そういう意味ではシャトレーゼの競合は町のケーキ屋さんじゃなく、業務用スーパーとか卸売店なのかもしれませんね。「肉のハナマサ」とか(笑)。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。