第101回 50年ローンで家を買う時代

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第101回 50年ローンで家を買う時代

安田
最近の20代は結婚する人が減っていると言われています。でも一方で、20代で結婚して戸建てを買ってる人も一定数いるんですよね。

鈴木
へぇ、20代で家を買うんですか。それはなかなか大変そうだ。だって今、資材費も人件費も高いでしょ。
安田
そうなんですよ。当然、ローンの額も大きくなる。今の20代夫婦って、なんと50年ローンを組むんですって。

鈴木
50年?! まあでも月々の負担を減らしたければ、支払期間を長くするのもアリなのかもしれないけど…。いやぁ、50年はすごいな。
安田
たぶん一般的には35年くらいだと思うんです。ただそれは60歳で定年退職していた頃の名残だと思うんですよ。昔は新卒入社してから定年退職するまでの期間で考えると35年くらいだったわけで。でも今って、60歳で完全に引退できる人なんて一握りじゃないですか。

鈴木
確かに。60歳になったから隠居します、っていう人はほとんどいないですね(笑)。今は9割以上がまだ働き続けてるんじゃないかな。
安田
ですよね。それで考えると、25歳からの50年ローンだと75歳ですが、今の若い人の感覚だと「それくらいまでは働けるだろう」って感覚なのかなと。

鈴木
なるほど、そう考えると突拍子もない話ではないか。でも実際どれくらいの人が50年ローンを組んでるんですかね。
安田
全体の2〜3割らしいです。もちろん申込時の年齢制限はあるみたいですけどね。若くないとダメ(笑)。

鈴木
そりゃそうだ(笑)。ちなみに僕は30年ローンで家を買ったんですね。もう完済していますが、やっぱり30年でも長かったですよ。そこからさらに20年でしょ? いやぁ…無理やな(笑)。
安田
笑。利息ばっかり返しているのかな、って感覚になりますよね(笑)。ただ逆に考えると、これは「日本の健康寿命が伸びている」って話でもあるんじゃないかと。

鈴木
ああ〜、確かにそうとも言えますね。実際昔に比べれば元気な老人が増えているわけで。
安田
そうそう。その傾向がどんどん進むと思うんですよ。今の若い子って、酒も飲まないしタバコも吸わないし、ストレスが溜まるような仕事の仕方もしない。つまり、めちゃめちゃ健康なんです。彼らが中年、老人になる頃には、80代90代でも当たり前に働く社会になっているのかも。

鈴木

なるほど〜。…とはいえ、不動産業界の視点からちょっと言わせてもらうと、50年間夫婦仲良く、というのはそう簡単じゃないですよ。というのも、最近は築年数10年未満のいわゆる「築浅」の中古物件がよく出てくるんですが、そのほとんどが離婚物件なんです。

安田
なんと! そうなんですね。う〜む、つまり離婚して広い家がいらなくなっちゃったから売り出しているわけですね。10年未満でバンバン離婚しているなら、50年なんてよっぽど相性がよくないと無理ですね(笑)。

鈴木
そうそう(笑)。女性の社会進出もさらに増えていくだろうし、離婚物件は今後もどんどん出てくるでしょう。
安田
なるほどなぁ。とはいえ、今の人たちって、互いを尊重しながらコミュニケーションするのが上手じゃないですか。そういう意味では50年ローンというのも、あながち非現実的ではないのかなという。

鈴木
ああ、確かに僕らの時代とは考え方も感覚も違っているでしょうね。うーん、でもやっぱり50年はさすがに厳しいんじゃないかなぁ(笑)。
安田
50年も我慢して結婚生活を続けていくくらいだったら、さっさと別れておく方がいいぞ、と?(笑)

鈴木
そうですね。30年くらいだったら我慢できるのかもしれないけど、50年だったらスパンと別れてしまう方が良い気がしちゃいます(笑)。というかそもそも、50年ローンを組まなきゃ買えないような高い家を買う必要があるんだろうかっていうのもあるし。
安田
それは私も同感です。別にそうまでして買わなくてもいいじゃないかって(笑)。

鈴木
人それぞれいろんな価値観があるので、ゴチャゴチャ言うべきじゃないとは思いますけどね。でも僕としては、お金をかけるべきは家だけじゃないと思うよ、とアドバイスさせていただきます。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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