この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第116回 過去を知らない方が、スムーズに世代交代できる?
第116回 過去を知らない方が、スムーズに世代交代できる?

そう考えると陸上選手も進化していますよね。それこそカール・ルイスが100m10秒切った時は世界中が驚きましたけど、今なんて10秒切るのは当たり前じゃないですか。

会社には勢いのある時期もあれば、衰退していく時期もある。どの時期にいるかで、経営の打ち手は変わると思うんです。だから仮に今のPanasonicに松下さんがいたとしても、当時と同じような経営で成功するのは難しいんじゃないかなぁ。

ああ、確かに。まだ誰もテレビを持っていない時代だったからこそ、安くて質のよいテレビをどんどん普及させていくことができた。「作れば売れる」という時代には確かにマッチした経営者ではあったけど、状況が違っていたらうまくいったかはわからないと。

どうなんやろなぁ…。ちなみに僕が会社を継ぐとなった頃は、親としては「ますます大変な時代になっていくのに大丈夫かな…」という気持ちがあったみたいなんですよ。でも僕からしてみると継いだ瞬間がスタート地点で、過去のことはわからない(笑)。今までより大変かどうかなんてわからないんですよ(笑)。

そうそう(笑)。あくまでも「今の時代の他の選手」や「自分自身」との比較をしているでしょ。昔の野球選手は160キロ投げるとかメジャーリーグに行くなんてこと、想像すらしてなかったはずで。でも大谷選手はそういうことを「当たり前」だと捉えて練習を重ねてきたんだと思いますよ。

そうそう。例えばSNSだって、僕らには何のことかさっぱりわからなくても、20代にとってみたら「こんなもの普段からやってますけど?」っていう感じじゃないですか(笑)。それこそ前回安田さんから教えていただいたChatGPTのいろんな機能だってスイスイ使いこなしていますよ(笑)。

そういうことです(笑)。「自分の子どもに会社を継がせるのなんてまだまだ先のことだ」と考えている中小企業の経営者の方々は、早く世代交代することで会社の業績がアップする可能性も案外あるかもしれませんよ。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。