この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第35回 日本の借金を減らすには自己破産しかない?
第35回 日本の借金を減らすには自己破産しかない?
日本の抱える借金がどんどん増えているようですね。
そうですね。だいぶ前に1000兆円を超えた、なんて話がありました。
でもこれって至極当たり前のことですよね。稼げる世代は減っているのに、受け取る世代は増えているんですから。
借金を返していくのは若者たちですが、その人数は今後さらに少なくなっていく。
ええ。実際、この人数じゃ返しようがないと思うんですよ。どうしたらいいんでしょうね?
いや、返さなければいいんですよ(笑)。個人で言うところの「自己破産」みたいにしてしまえばいいんじゃないのかな(笑)。
それはなかなか尖ったご意見ですね(笑)。でも仮にそうしたとすると、国債を買っている人たちは財産を失うことになりますよ。金融機関も全て潰れてしまうかも。大変なことになってしまいませんかね。
それはそうなんですが…。でも返せないものはしょうがない。現実的に無理ですよ、ここまで借金が膨れ上がっていれば。
だからこそ国も、どうにかして借金を減らそうと増税に次ぐ増税になっているんでしょうね。今後も税金や社会保険料は上がる一方だと思います。
難しいですよね。他にいい方法があればいいんですけど。
たとえば企業だったら、低い金利で借金して、金利だけを払いながら借り換えを繰り返すこともできますよね。
ええ、みんなそうやっているでしょうね。
だからそれと同じように、国債の金利をものすごく下げるのはどうですかね。国は金利だけを払い続けていくんです。
ほう。それは元本の返済はしないということですか?
はい。それが借金を減らすためには一番現実的な方法じゃないかなと。だって今は借金を返すために国債を発行しているようなものじゃないですか。
確かにそうかもしれない。それこそ国が破産をして存続できなくなってしまったら、国民側も困っちゃうわけだし。
そうなんですよ。だから当面はその方法で乗り切っていく。で、いずれ我々を含めた高齢者世代がポーンといなくなるので(笑)、借金の額もガクッと減りますから。
確かに。一番人数が多くて一番お金がかかっている世代がいなくなれば、ようやく国も借金を重ねる必要がなくなりますね。そうなるまでには、あと30年くらいかな(笑)。
そうですね、30年も経てば我々も死んでいるでしょう(笑)。
とは言え、その世代が遺していくことになる1000兆円の借金はどうしましょうか。30年後くらいだと借金も1500兆円くらいに膨れ上がっているかも。
そうですねぇ…。いっそのこと70歳以上の人に対しては多額の生命保険をかけることにしましょうか?
生命保険ですか? それは誰が払うんでしょう。
国ですよ。掛け捨ての生命保険をかけておけば、死亡後には国にお金が戻ってきますよね。死ぬと家のローンがゼロになるのと同じような仕組みです。
あぁ、そういうことか。要は、死んでお返しするわけですか(笑)。
笑。あとはこれ以上借金を増やさないために、高齢者にかかる医療費を削減する。たとえば高齢者の窓口負担額を8割にするとか。
そうなると病院に行く人が減って、自然と死期が早くなる気がするけど。…あ、でもそれがいいわけか。僕らの世代がさっさといなくなれば借金も増えないんですもんね(笑)。
ええ、まさに(笑)。だいたい、窓口負担が安いからすぐ医者にかかって大量の薬をもらってくるわけで。
お金がかかるのが嫌なら別の方法を探せばいいんですよね。たとえば食生活を見直したり運動をしたりして健康になれば、病院に行かなくてすみますよ(笑)。
まさにその通りですよ!
税金の高さでいったら北欧の国々もすごく高いですよね。税金や社会保険料が所得の半分以上を占めているとか。それで国民はちゃんとやっていけているんでしょうかね。
彼らは支払う税金は高いですが、社会保障がすごく充実しているんですよね。国民全員、医療費も無料だし学校も無料だし。
なるほど。みんな平等に、高い税金に見合ったリターンがあるんですね。
ええ。ところが日本の場合は、税金のほとんどがおじいちゃんおばあちゃんのための社会保険費に消えていく。若い世代は高い税金を払っていても、何も恩恵を受けられないんです。
そういういびつな仕組みに気づき始めた若者たちは、きっと続々と日本から出ていってしまうんでしょうね。
そしてますます稼ぎ手が減った日本は、さらに借金を重ねていく。この悪循環をどうにかして断ち切るためにも、我々世代ももっと真剣に考え続けなくてはいけませんね。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。