第36回 生まれながらに30坪をもらえる時代がくる?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第36回 生まれながらに30坪をもらえる時代がくる?

安田
実は私、これまでに一度も家や土地を買ったことがないんですよ。

鈴木
え、そうなんですか。ずっと賃貸ですか?
安田
はい。地面に「ここからここまでが安田の土地」と印をつけることに、ものすごく滑稽さを感じてしまって。ましてそのために30年も40年もローンを払い続けるのはナンセンスだな、と(笑)。

鈴木
なるほど。そういう考え方もあるんですね(笑)。
安田
というか、今の人たちは衣食住の「住」にお金がかかりすぎていると思いませんか?

鈴木
確かに、都心の地価はどんどん値上がりしていますからね。
安田
ですよね。そこで私は、もし自分が政治家に立候補するとしたら、「生まれた瞬間に30坪の土地をプレゼントする」という公約を掲げようと思っているんです。

鈴木
ほう。それは新生児に土地を与えるということですか?
安田
ええ。生まれたときに国から30坪の土地をもらい、死ぬときに国に返す。つまり土地を買う必要がないので、「住」にかかるのは家を建てる費用だけになるわけです。

鈴木
なるほど。ベーシックインカムみたいな感覚でしょうか。
安田
そうですね。ベーシックインカムのようにお金を配ろうとすると原資の確保が大変ですが、国有化した土地を配るのであれば原資はいらないですからね。

鈴木
とても興味深い公約ですね(笑)。でも、与えられる土地の場所はどうやって決めますか?
安田
そうですねぇ。公平さを期すために、くじ引きはどうでしょう?(笑)

鈴木
笑。確かにそれなら地方の在住者が増えそうですね。半分強制的ではありますが(笑)。
安田
もしくは場所によってもらえる土地の坪数に変化をつける。沖縄なら60坪もらえるけど、東京の文京区なら5坪だけとか。

鈴木

5坪! ペンシルタワーしか建てられないですね(笑)。

安田
笑。とにかく私は、土地を所有するために長年にわたってローンを払い続ける生活から解放してあげたいと思っているんです。

鈴木
確かに収入に占める土地や家の費用は相当大きいですからね。私も先日、ようやく30年ローンを払い終わりました(笑)。
安田
え?! 鈴木さん、ローンなんて組まれていたんですか(笑)。

鈴木
組んでいました。銀行に払うために働いていたようなもんです(笑)。
安田
ではようやく完済できて今は感無量なわけですね。おめでとうございます(笑)。とは言えこれから人口はどんどん減少し、空き家や空き地がたくさん出てくる時代になるわけですよ。

鈴木
はい。実際、私のやっている「相続不動産テラス」事業でも、相続した家や土地をどうやって処分すればいいか困っているお客様は多いです。
安田
ですよね。このままだと全国各地で、手入れや管理のできない空き家・土地が増え続けてしまいます。

鈴木
ただ実は今年から、相続した土地を国が代わりに管理するという新しい制度が始まったんですよ。
安田
へぇ、そうなんですか。知りませんでした。

鈴木
条件もいろいろあるし、有料ではあるんですけど。自分で管理できずに荒れ地にしてしまうよりずっといいとは思います。
安田
ということはやっぱり、そういう家屋や更地を国がまとめて引き取って、新しく生まれてきた国民に平等に渡していくというのは、なかなかいい案ですよね?(笑)

鈴木
ええ、いいと思います。それに少子化対策にもなりそうですね。「1人30坪ということは、3人産めば90坪がもらえるのか!」って(笑)。
安田
まさに仰る通りです。ベーシックインカムならぬ、「ベーシック30坪」法案です(笑)。

鈴木
行政によって政策のアレンジもしやすいかも。「ウチに移住してくれるなら35坪をお渡ししますよ」というように。そうすれば地方に住みたい人も増えるでしょうね。
安田
以前から思っているんですが、日本の地方ってすごく特殊ですよね。都市部をただ不便にしたバージョンというか。たとえばアメリカであれば、地方都市にも大企業やベンチャー企業などがたくさんあるわけです。

鈴木
ああ、確かに。シリコンバレーがあるのは片田舎だし、スペースX社がロケット飛ばしている場所なんて砂漠みたいな場所ですから(笑)。
安田
そうなんですよ。でも日本の地方都市ではそうはならない。で、どうしてなのかと考えたときに、地方には優秀な人が集まる大学がないからなのではと思い立ったんですよ。

鈴木
なるほど。仰る通り、有名な大学は首都圏や主要都市に偏っていますね。ということは賢い学生もそこに集中しているということですか。
安田
仰る通りです。だから能力の高い学生や若者はもっと全国に分散させるべきなんじゃないかなと。大学に限らず、生まれ育つ場所も全国各地に分散させる。そうすれば日本も地方から新しい産業が次々と生まれると思うんですよね。

鈴木
今の地方って、優秀な人材の採用が難しくなっていますよね。大都市の大学で学んだ優秀な学生さんは、そのまま大都市に残って就職するのが当たり前になっているから。
安田
そうですそうです。だからもういっそのこと、国会議事堂を地方に持っていけばいいんじゃないですかね。首都も持ち回り制にして。毎年移し替えるんです。

鈴木
「地方」とか「首都圏」とかいう概念を覆すわけですか。面白い(笑)。確かにそれなら全国各地が平等になりそうです。
安田
地方であれば産まれながらに広い土地がもらえるという仕組みなら、全国の人口分布もある程度ならすことができるかもしれない。いいと思いませんか。

鈴木
はい、すごくいいと思います。ただ問題は「誰がやるか」ですね(笑)。
安田
まさにそこが問題です(笑)。政治家ってどんなにたくさんの票を獲得できても、結局1人では何も変えられない。他にも大勢いる政治家の中で、多数派の意見が採用されてしまうので。

鈴木
安田さんの公約に賛同してくれる仲間を増やさないといけませんね。
安田
はい。鈴木さん、私が立候補したら、ぜひ1票いれてくださいね!(笑)

鈴木
わかりました、期待していますね(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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