第61回 理想的な「ギラギラ人生」の終わらせ方

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第61回 理想的な「ギラギラ人生」の終わらせ方

安田
この対談のタイトルにもあるように、我々はもう「イケイケどんどん」は卒業しているわけですけど(笑)。ただ世の中には、「一生ギラギラし続けてこそ人生だ」というような方もいらっしゃるわけで。

鈴木
そうですね。僕らくらいの世代になると、生涯現役で「ギラギラ」を押し通していく人と、そういう生活は卒業してあるがままにいく人と、ハッキリ分かれてきている気がします。
安田
ああ、確かに。鈴木さんの周りはどちらのタイプが多いですか?

鈴木
僕の同級生にギラギラしている人はほぼいませんね。銀行で支店長まで勤め上げた友人もいますけど、今は役職定年して、ギラギラの要素はゼロ(笑)。他にも会社勤めをしていた友人はだいたい同じような感じですね。
安田
経営者仲間はどうですか? 私の感覚では、ギラギラした人って経営者や政治家に多い気がするんですけど。

鈴木
あぁ、言われてみるとそうかもしれません。でも趣味とかボランティアとか、定年後に打ち込めるものが見つかった人は、会社員や公務員でもギラギラ要素を感じませんか?
安田
仕事以外に人生を懸けるものが見つかれば、ギラギラし続けられると?

鈴木
そうそう。あ、でもそういう人は「ギラギラ」というよりも「イキイキ」の方がしっくりきますね。ギラギラって言うと、ちょっと「欲が絡んでいる」ようなイメージがあるから(笑)。
安田
わかります(笑)。

鈴木
イキイキしている人には「それをずっと続けていってくださいね」って思えるけど、ギラギラしている人には「もういい加減に辞めた方がいいんじゃないの?」って言いたくなります。
安田
うーん、もちろんイキイキした人生はとても素晴らしいと思います。でも経営者のような会社のトップには、私はむしろギラギラしていて欲しいんですよ。

鈴木
ははぁ、そういう気持ちもわからなくないです。社員の先頭に立ってリーダーシップを発揮しなきゃいけないんだから、エネルギッシュでいてもらわないと困るっていう。
安田
そうですそうです。ちなみに先ほど鈴木さんは「ギラギラには欲が絡んでいるように思う」と仰っていましたが、それってどんな欲なんでしょうね。

鈴木
うーん、政治家だったら、やっぱりお金じゃないですか?(笑)
安田
笑。でも実際、70歳80歳になってもまだお金に固執しますかね。もうそんなに使いみちもないと思うんですけど…。

鈴木

だとすると、名誉とか?

安田
あぁ、名誉はあり得そうですね。人間、年を取ると肉体的にも精神的にも若い人には勝てなくなる。でも名誉ってなくならないというか、唯一勝てるものだと思ってしまうところはあるかもしれない。

鈴木
「みんなからチヤホヤされていた立ち位置」をキープしたいんでしょうね。「名誉」っていうのはそういう欲に非常にマッチしますから。
安田
なるほどなぁ。ところで政治家も経営者も明確な「定年」はないじゃないですか。それについて鈴木さんはどう思います?

鈴木
個人的には、絶対に定年制にした方がいいと思いますね。それこそ会社員と同じ65歳くらいで引退願うと。
安田
私も同意見なんです。よく年配の議員なんかが失言問題を起こしますけど、人間年をとれば嫌でも認知能力や判断力が落ちるわけで、仕方がないんですよ。だからこそ、そうなる前にいさぎよく退いてもらったほうがいい。

鈴木
仰るとおりですよね。それが周りのためでもあるし、本人のためでもある。
安田
そうそう。最近だと「自動車免許の返納時期」なんかもよく話題になりますが、ルールとして「この年令になったら返納する」と決めなくてはいけないと思います。

鈴木
運転能力でいうと、割と個人差はありそうですけどね。でもそこは年齢で一律にするべきだと。
安田
ええ。免許が取得できる年齢は一律なわけですから、一緒ですよ。お酒やタバコだってそうです。

鈴木
そう言われてみると、確かにその通りだ(笑)。そして安田さんは、経営者や議員の資格も、ある年齢で「返納」すべきだと仰るわけですね。
安田
そういうことです。そういえばアメリカの大統領の任期も2期・8年までと決まっていますしね。

鈴木
ああ、確かに。それで思い出しましたが、僕は昔「青年会議所(JC)」に所属していたんですけど、あの組織の良い点って「卒業」があることなんですよね。どんなに続けたくても、40歳になれば自動的に卒業。
安田
いいですね。わかりやすい。

鈴木
そうなんです。で、終わりが決まっているからこそ、みんな一生懸命やるんです。終わりの見えないマラソンがしんどいのと同じで、ゴールが見えていた方が人間頑張れるんですよ。
安田
本当に仰るとおりだと思います。一方で、今の65歳なんてまだまだ若いんですよね。だからこそスパッと辞めることが難しいのかもしれない。

鈴木
まぁその気持ちもわかるんですけどね。ただ安田さんがよく「終わりから考える」って仰っていますけど、やっぱりゴールをしっかり決めないと。「頑張れる限り頑張る」じゃなく、「◯歳まで」と先に決めてしまう。それが大事なんだと思いますね。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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