第65回 出生率アップのカギは「個人の感情」次第?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第65回 出生率アップのカギは「個人の感情」次第?

安田
先日ニュースでも話題になっていましたが、日本の合計特殊出生率、つまり1人の女性が生涯に産む子どもの数が、最新のデータで1.20だったそうです。

鈴木
ああ、東京については1を下回ったって話題になっていましたね。単純な話、合計特殊出生率が2を超えない限り、人口は増えていかないわけで。
安田
そういうことですね。しかも人口動態統計でみると、2030年から若年人口が急減すると言われています。

鈴木
この数十年間に生まれた子どもたちの数から、2030年の人口割合が予測できるわけですね。ということは、2030年までの6年間はかなり重要な期間になるんじゃないですか?
安田
まさにそのとおりで。厚労省も「この6年間が最後のチャンス」だって言ってるんですよね。要はこの6年で何かしらの手を打たない限り人口は減り続ける一方だと。ただネットだと「こんなに生活が苦しいのに、子どもなんて産めるはずがない」っていう意見が圧倒的に多いんですよ。

鈴木
そりゃそうでしょうね。給料は増えないのに税金はどんどん上がっていくような状況で、どうやって子どもをたくさん産んで育てりゃいいのよ? って話です。そう感じちゃうのは当然だと思うなぁ。
安田
私もそう思うんですけど、一方で「子どもが増えないのは、お金の問題だとは思わない」っていう意見もあるんですよ。実際「お金はないけど子だくさん」というパターンもあるじゃないかと。

鈴木
ああ、確かに。逆に、高給取りの人が独身生活を謳歌してたり、夫婦2人でダブルインカムだけど子どもは産まない選択をしていたりもする。
安田
そうそう。だから「必ずしも生活が苦しいから子どもを産まないわけではない。結局はその人次第なんだ」と。私としては、こちらの意見の方が的を射ているなと思いまして。というのも、前にもお話ししましたけど、世界的に見ても先進国は出生率が下がっているわけじゃないですか。

鈴木
生活が苦しいはずの貧困国の方が、子どもの数は圧倒的に多いですもんね。
安田
ええ。ということは、「少子化対策」としてお金を配ったところで、せいぜい合計特殊出生率1.20が1.25とか1.30に微増する程度の効果しか出ないんじゃないかなと思うわけです。

鈴木
なるほどなぁ。お金とか子育てしやすい環境とか、そういった外的要因で人口を増やすのは無理なのかもしれませんね。本人たちが「子どもを作りたい」と思わなきゃ、子どもは産まれてこないわけで。
安田
そうなんですよ。それで言うと、最近の若者は「生活が苦しいから産まない」って“思い込んで”いる部分もあるんじゃないのかなと。

鈴木
あぁ…思い込みかぁ。周りの大人が「お金がないと子どもなんて産めない!」って言っているのを鵜呑みにしちゃっている。
安田
そうそう。ちなみに私は前妻との間に3人の子どもがいるんですが、一番上の子は高卒で、下2人は世間一般でいうところの「いい大学」を出ているんですね。この3人の中で、一番上の子だけが結婚していて、しかも子どもも3人いるんです。

鈴木

あ、そうなんですね!

安田
ええ。その子は高学歴でもないし、収入だって大卒の子たちに比べれば低いかもしれない。でも日々すごく楽しそうに、家族みんなで幸せそうに暮らしているわけですよ。それを見ていると、別に学歴や収入が高くなくても、子どもを作って幸せに暮らすことはできるのに…と思うんですよ。

鈴木
なるほどなぁ。まぁ、身も蓋もない言い方をすれば、外野が何を言おうが産みたい人は産むし、産みたくない人は産まないんですよ。当人たちの「感情」をコントロールすることなんてできないわけで。
安田
同感です。だから本気で人口を増やしたいのであれば、人の感情の変化に任せるのではなく、移民を受け入れるとか、一夫多妻制にしてしまうとか、そういう荒治療が必要なんじゃないでしょうか。

鈴木
一夫多妻制ですか?(笑)
安田
ええ。「お金がないから子どもなんて育てられない」という主張が多いので、めちゃくちゃ稼いでいる人が重婚できるようにしちゃえばいいんですよ。…もちろんこれは暴論だとはわかっていますが(笑)。

鈴木
なるほど(笑)。確かに「人口を増やすこと」という目的だけを達成しようとするならば、そういう極論もありかもしれない(笑)。
安田
今はもう「お家を断絶させないために絶対に子ども産まなくてはいけない」という時代でもないですし。「このままだと人口が減ってしまうから、国を守るために子どもを産むわ!」なんて思う人なんていませんよ(笑)。

鈴木
そうですね(笑)。そういう意味ではシンプルに、「子どもがたくさん欲しい」と思っている人をサポートしてあげるのがいいんじゃないですかね?
安田
あぁ、なるほど。全ての人を平等にサポートしようとするのではなく、「子どもを産んで育てたい」という人を重点的に支援する、と。確かにそれが一番効率よく、人口減少を食い止めてくれる方法かもしれませんね。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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