第76回 「老い」を受け入れることで、心地よく生きられる

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第76回 「老い」を受け入れることで、心地よく生きられる

安田
私、55歳を過ぎてから「飛蚊症」という目の病気になりまして。それでなくても前から視力が悪かったのに、さらに視界がぼやけて見えづらくなってしまったんです。

鈴木
あぁ…そうなんですね。僕も最近ちょっと目が悪くなってきたんですよね。
安田
まぁ我々もあれこれガタが来る年代なんでしょう(笑)。最近は体力も衰えてきたし、物欲も好奇心もなくなってきちゃったし。歳を取ると全てにおいてエネルギーがなくなってきませんか?

鈴木
いやぁ、どうだろう? そういう意味では、僕はまだちょっと若いのかも(笑)。
安田
それは羨ましい(笑)。でね、今日は何を話したいかと言うと、私は今の「目が見えない」「体が動かない」「エネルギーも湧いてこない」という状況が、人生最後の「心の鍛錬」のような気がしてならないんですよ。

鈴木
ほう、心の鍛錬ですか。
安田
はい。鈴木さんもまだ明らかな老いは感じられていないかもしれませんけど、それでもやっぱり20代30代の頃とは違うでしょう?

鈴木
それはもう全然違いますね。肉体的な衰えは確かに感じます。
安田
その衰えは人間として自然なことなわけじゃないですか。そして年々その衰えが加速していって、最後には死ぬ。この過程を認識しながら生きていくっていうことは、人間にしかできないことだと思うわけです。私はこの期間を「人生道場」とでも呼ぼうと思っているんですけど(笑)。

鈴木
心の鍛錬とか、人生道場とか、まさに修行ですね(笑)。
安田
そうそう、「老いを受け入れていく修行」ですよ(笑)。よく「老人になると短気になる」って話があるじゃないですか。店員さんとかに急に怒鳴り始めるお爺さんとか。

鈴木
あー、ウチの親父の晩年がそうでした(笑)。歳を取ってわがままになっちゃって、気に食わないことがあるとすぐにキレるようになっていましたね。
安田
そうでしたか。鈴木さんのお父様が悪いというわけではないですが、やっぱり老いていくことで、今まで当たり前にできていたことができなくなって、不貞腐れちゃう人もいると思うんです。

鈴木
「どうせ俺は何にもできない老人なんだー」って?(笑)
安田
そうそう(笑)。そういう気持ちをどう受け止めるかというのが、人生最後の課題なんだと思うわけです。老いや劣化を受け入れて、残りの人生を快適に心地よく生きていけるかどうか。

鈴木

なるほど、老いを受け入れる、か。でもより現実的な観点だと、老後の心配事で一番大きい割合を占めるのって、お金のことなんじゃないですかね。もちろん肉体的・精神的な衰えも不安ですけど、お金がないのも不安じゃないですか。

安田
確かに、お金のある老人とそうでない老人とでは、だいぶ「心のゆとり」が違ってきそうですね。お金がたっぷりあれば、穏やかな気持ちで日々過ごせるのかもしれない。

鈴木
そうですよ。お金の心配がないだけで、だいぶ「キレない老人」でいられると思いますもん(笑)。だからこそ、その手の不安を老人になる前に解決しておく、ということも大事なのかもしれない。
安田
なるほどなるほど。ちなみに鈴木さんは老後の不安を解消するために、今のうちから先手を打っていることってあるんですか?

鈴木
それでいうと、僕、ゴルフのエージシュートをしたいと思っているんですよ。
安田
エージシュートって、確か自分の年齢以下の打数でホールアウトすることでしたっけ?

鈴木
そうそう。それで僕は今56歳なんですけど、さすがに56で上がるのは無理じゃないですか(笑)。
安田
確かに。60歳で60も難しそうですけど…(笑)。

鈴木
そうなんですよ。でも80歳で80はいけるんじゃないかなと思っていて。
安田
なるほどなるほど。つまり鈴木さんは、エージシュート達成するために、80歳まで元気にゴルフをし続けていくことが目標だというわけか(笑)。

鈴木
そういうことです(笑)。だから不摂生しないように気をつけながら、適度に運動もして、元気でいようとは思っています。
安田
なるほどなぁ。でも実際鈴木さんは今のまま、ずっと心地よく生きていきそうな感じがしますね(笑)。

鈴木
不機嫌な爺さんにはなりたくないですからね~(笑)。そういう安田さんも、今と変わらず生きていきそうですよね(笑)。
安田
はい、私も「飄々と生きたい」と思っています(笑)。お互い、偏屈な爺さんにならないようにがんばりましょう(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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