『夫婦の絆は必ず終わる』終わりから考える重要性【3/4】

私(安田佳生)が終わりを意識し始めたのは、まさに終わった時。すなわち会社が潰れた時です。終わると思っていなかったことが終わる。そのとき痛感したのは「終わりを想定していなかった愚かさ」です。会社にも、人生にも、あらゆるものに終わりはあります。終わることが問題なのではなく、自覚がないままに終わっていくことが問題なのです。この対談は、ご葬儀というまさに「人生の終わり」を仕事にしている鈴木社長に、私の率直な疑問をぶつけたものです。社長の終わり、社員の終わり、夫婦や友達の終わり、そして人生の終わりについて。終わりから考えた二人の対談をぜひご一読ください。

『夫婦の絆は必ず終わる』

安田
安田
「社長の終わり」「会社員の終わり」と話してきましたけど。他にもいろんなものに終わりがあると思うんです。
鈴木
鈴木

たとえば?

安田
安田
親子とか。「子離れできない親」「親離れできない子ども」っているじゃないですか。
鈴木
鈴木
はい。

安田
安田
あれも終わりから考えないことが原因だと思います。
鈴木
鈴木

なるほど。

安田
安田

子どもは親から離れていくのが正しい姿だし、親は必ず死ぬものだし。

鈴木
鈴木
このまえ事件を起こした人がいましたよね。親が死んじゃって立て篭もった。

安田
安田

はいはい。医者を呼んで母親を蘇生させようとした人ですよね。断った医者を散弾銃で殺しちゃった。

鈴木
鈴木

あれも根っこは同じでしょうね。

安田
安田

同じだと思います。彼の中では親が終わってないんですよ。ちゃんと親離れできてなかった。

鈴木
鈴木
たしか親も80か90ぐらいでしょ。

安田
安田
そうなんですよ。子供と言っても還暦ぐらいです。

鈴木
鈴木

蘇生したって、もう長いことないじゃんって思うけど。

安田
安田

もはや天命ですよ。

鈴木
鈴木

受け入れられないんでしょうね。

安田
安田

でも受け入れるしかない。順調にいけば親は必ず死ぬんです。

鈴木
鈴木
順調って(笑)すごい言い方。

安田
安田
だけどそうでしょ。悲しいことではありますけど、親が先に死ぬって正しい順番。

鈴木
鈴木
そうですね。

安田
安田
「じゃあ、何歳だったらいいの?」って、立て篭もった彼に聞いてみたいです。

鈴木
鈴木

答えられないでしょうね。

安田
安田

はい。きっと答えられない。

鈴木
鈴木

「ずっと生きてて欲しい」って言うんじゃないですか。

安田
安田

べつに「親を殺せ」と言ってるわけじゃなく。死んでもいいように準備しておくべきだと言いたいわけです。

鈴木
鈴木

まさに親離れですね。

安田
安田

親も同じですよ。子離れしなくちゃいけない。自分の元からいなくなることを考えておくべき。終わりは必ずあるんです。

鈴木
鈴木

子離れはできてる自信ありますね。子どもが3人とも高校生の時に留学してるので。その時点で何か吹っ切れた。

安田
安田
へぇ~

鈴木
鈴木

「いなくなるってこういうことか」って経験できた。だから、いつかそうなるという覚悟ができました。奥さんもそう。どっちが先に死ぬか分からないけど。覚悟してます。

安田
安田

すごいですね。

鈴木
鈴木
僕が先に死にたいなと思ってますけど。

安田
安田

夫婦の場合は「別れる」という終わりもありますよ。

鈴木
鈴木
僕から別れることはないですね(笑)奥さんから言われたことはありますけど。
安田
安田

あるんですか(笑)

鈴木
鈴木
あります(笑)
安田
安田
じつは私も離婚経験者でして。偉そうなことは言えません(笑)
鈴木
鈴木

そうですよね。

安田
安田

私は両親がすごく仲がよくて。「生まれ変わってもまた一緒になるんだ」って、いつもふたりで言ってましたね。

鈴木
鈴木

幸せな家庭ですね。

安田
安田

だから自分も離婚なんて考えたことなかったんです。子供も3人いましたし。だけど結婚してすぐに奥さんに「別れたい」って言われた。

鈴木
鈴木
えっ、どういうこと!?
安田
安田
浮気とかではないんです。家のことを何もしなかったから。子育てもまかせっきりで。「自分はお金稼いでくるのが仕事だ」って信じてましたね。
鈴木
鈴木
その時はもう社長ですか?
安田
安田
はい。だから相手も私が社長だとわかって結婚してる。とうぜん覚悟はあるだろうぐらいに思ってました。「子育ては別でしょ」って言われました。
鈴木
鈴木
あ~、なるほど。

安田
安田
当時は理解できなかったです。なぜその程度のことで離婚までしないといけないのか。いい大人なんだから子供のために我慢だろ、お互いに、って思ってた。

鈴木
鈴木
わかります。

安田
安田

でも今はちょっとだけ、彼女の気持ちがわかるようになりました。

鈴木
鈴木
へえ〜。
安田
安田
じつは10年前に再婚して、今2歳の子どもがいるんですよ。年齢もあるんでしょうけど、今はまじめに一緒に子育てやってまして(笑)

鈴木
鈴木
そうなんだ。
安田
安田
はい。そうしたらですね、子どもひとりでも大変なんですよ。奥さんがいない時なんてもうへとへとになる。「これを3人まかせっきりにたら、そりゃ離婚されるな」って気づきました。
鈴木
鈴木
安田さんほどじゃないけど、僕もたぶん7割ぐらいは同じような感じですね。同じようなことをよく言われました。

安田
安田
当時の経営者ってそんな感じでしたよね。
鈴木
鈴木
うちの場合は奥さんが我慢して、きっと耐え抜いたんだと思います。

安田
安田
「うちは絶対離婚とかないから」って言う男友達がいるんですけど。女性でそう思ってる人は、たぶんいないんじゃないかなって気がする。

鈴木
鈴木
なんかわかる気がします。

安田
安田

どんなに仲良くても「必ず夫婦は破たんする」という前提で考えるべきだ、と思ってまして。

鈴木
鈴木
すごい前提ですね(笑)

安田
安田
私の実感ですね。破たんするのが普通で、破たんしないために努力した夫婦だけが破たんしない。

鈴木
鈴木
それ会社の存続と一緒ですね。
安田
安田

一緒ですね。私は1回目の離婚でそれを学習しました(笑)

鈴木
鈴木
すごい(笑)
安田
安田

相手のせいにしたり、相性の問題だと思ってる人は、何度も同じ失敗をすると思う。「相手が変わったから今度は大丈夫」みたいに。

鈴木
鈴木

それは転職と一緒じゃないですか。

安田
安田
同じです。会社とか環境のせいにする人。
鈴木
鈴木
履歴書に社名がワーッと載ってる人。あれは離婚で「バツいくつ」と一緒。

安田
安田
何事も終わりがあると考えた方がいいんです。社長にも、会社員にも、夫婦にも。私は友だちの数ですら8人と決めてまして。
鈴木
鈴木

なんと。8ですか。

安田
安田
はい。べつに8に意味はないんですけど。まあ5人じゃ少なすぎるかなって。とにかく上限(終わり)を決めることが大事。
鈴木
鈴木
すごいなあ(笑)友達が増えそうな時はどうするんですか。

安田
安田

ひとり友だちを増やそうと思ったら、ひとりお断りしないといけない(笑)

鈴木
鈴木
なるほど。
安田
安田
私はちょっと極端ですけど。でも友だちが何百人もいる人とか、本当に友だちなのかなって思っちゃう。

鈴木
鈴木
知り合いに、毎年「自分のベスト100」を決めてる人がいます。

安田
安田
ベスト100?
鈴木
鈴木

その年の人の順位を決めてる。

安田
安田
おお、すごいですね(笑)
鈴木
鈴木
その年に自分が興味ある人といちばん接点をもつわけです。自分を見直すいい機会になるって。
安田
安田
なるほど。人との関係も、どんなに仲がよくても、終わる前提で考えるべきだと思います。一旦終わって、まだ友だちでいたいんだったら、また延長すりゃいい。
鈴木
鈴木
延長ですか。
安田
安田

友達という名の下に、ダラダラ関係をつづけるのはよくない。たとえば「本を年間に1,000冊読む」みたいな人いるじゃないですか。

鈴木
鈴木

いますね。

安田
安田

ああいうのはどうも好きじゃないんですよ。Googleの計算によると世界には1億4000万冊ぐらい本があって。

鈴木
鈴木

へえ〜。

安田
安田

毎年1000冊読んだって50年で5万冊。つまり0.04%も読めない。

鈴木
鈴木

なるほど。

安田
安田

時間は限られてるじゃないですか。だから人生で読める本の数もとうぜん決まってる。手当たり次第に毎年1000冊なんて読んじゃいけないんです。

鈴木
鈴木

流行りの本にすぐ手を出しちゃいけないと。

安田
安田

そういうことです。たとえば「人生で10冊しか読めない」という決まりがあったら、「自分はこの本を読むんだろうか?」って真剣に考えるじゃないですか。

鈴木
鈴木

なるほどねえ。

安田
安田

映画でも、生涯で10本しか観られないってなったときに、この映画を観るのか。それでも観たいってものを選ぶべきかなと。人生は限りがあるので。

鈴木
鈴木

どういう基準で選んでいくかってのが、すごく大事になってきますね。

安田
安田

選ぶってこと自体が大事ですよ。終わりを考えないと選ばないんです。きのうと同じことをダラダラ繰り返してしまう。ダラダラ本を読んだり、ダラダラ人とつき合ったり、ダラダラ仕事をつづけちゃったり。

鈴木
鈴木

確かに。

安田
安田

やっぱりエンドを考えるってのがすごく大事な気がします。鈴木社長もぜひ友だちを5人に決めていただいて。

鈴木
鈴木

そうなると利害関係じゃないなあ。

安田
安田

ちがいますよね。利害関係ってそんなに上位には来ないんです。

鈴木
鈴木

やっぱり「好き嫌い」になるなと思います。というか、なるべきです。

安田
安田

本も同じで「これ読んだら営業力が身につく」みたいな本じゃなく、心が欲する本とか好奇心をそそられる本を読むべき。

鈴木
鈴木

直感を信じることは大事ですよね。

対談相手:鈴木 哲馬
株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役
昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

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