第387回 新卒の年収1,400万円というリスク

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第387回「新卒の年収1,400万円というリスク」


安田

霞が関キャピタルという上場企業がありまして。ホテルや物流施設の開発をやっているデベロッパーなんですけど。

久野

新卒採用がニュースになってましたね。

安田

はい。新卒の年収がなんと1,400万円という。採用責任者も27歳。この人がまた面白くて。

久野

どんな人ですか。

安田

子供の頃にセミ研究の論文で賞を取っていて。東京大学に推薦入学してるんです。東大って推薦で入れるんですね。

久野

年間100名ぐらいの狭き門ですけど。基本的に高校の成績がトップクラスで、共通テストで8割以上、それにプラスして優れた活動実績や論文が必要です。

安田

普通に受験した方が簡単そうですね(笑)

久野

そう思います。東大もいろんな人材を集めたいんでしょう。

安田

この人は新卒一括採用に疑問を持っているみたいで。能力に関係なく「全員一律で同じ給料、同じ役割というのが、もう無理じゃないか」と。

久野

私もそう思います。今みたいな制度が続くと優秀な人がどんどん外資に流れてしまいます。

安田

この方もそう言っていました。ちなみに新卒に年収1,400万円はどう思いますか?年収に見合う新卒に対してのみということですけど。

久野

出せるならどんどん出した方がいいと思います。トヨタも今平均年収1,000万円を超えたし。素晴らしいことですよ。

安田

そもそも日本の新卒ってなぜ横並びなんでしょうね。

久野

国民性じゃないですか。「隣が20万ならうちも20万」みたいな感じで。もっと競争し合えば日本社会も良くなると思いますけど。

安田

そうですよね。考えてみたらトヨタでやっと1,000万円を超えたってことですもんね。あんなに儲かっているのに。

久野

確かに。トヨタなら平均1,500万円でもおかしくないですね。まだまだ余力があるし。

安田

イーロンマスクのスペースXでは現場のスタッフがビリオネアになったそうです。給料だけじゃなくて株も配って。

久野

ビリオネアって10億ドルですよ。今なら日本円で1500億円ぐらい。

安田

アメリカ企業は桁違いですね。

久野

向こうは現場の社員もリスクを取ってやるから。日本人もリスクを取らないとこうはならないですよ。

安田

確かに。日本人は将来上がるかもしれない株より目先の給料って感じでしょうね。

久野

はい。そこが問題です。

安田

今回の新卒1,400万円は会社側がリスクを取った感じですよね。日本では簡単に給料を下げられないし解雇もできないので。

久野

リスクになるようなレベルは採らないんじゃないですか。

安田

とはいえ新卒ですよ?

久野

新卒でも人によって全然違うじゃないですか。明日から稼げそうな人っていますもん。日本人は「新卒だから出来ない」と思い込みすぎ。

安田

確かに数は少ないですけど「間違いなく戦力になる」って人はいますね。

久野

いますよ。ビジョナリーな学生起業家ですごくしっかりしてる人とか。

安田

私が起業した時なんて「楽して金持ちになること」しか考えていませんでした。

久野

同じく(笑)

安田

それにしても新卒に1,400万円はすごいと思いますけど。中途なら分かりますけど。

久野

中途は相場が上がり過ぎているので逆に1,400万円に見合わない人材も多いです。とくに大企業に勤めていた人は実力の割に高すぎます。

安田

確かに。

久野

そもそも大企業と中小企業って、テニスと卓球ぐらい競技が違うじゃないですか。

安田

まったく違いますね。

久野

中小企業では現場が出来ないと使い物にならない。そもそも人がいないから自分でやらなきゃいけないこともたくさんあって。

安田

マルチタスクは当然ですよね。元々の能力は高いんでしょうけど、中小企業で同じ年収を稼ぐのは大変かも。

久野

しっかり教育もされているので知識やマネジメントスキルは高いんです。ただ大企業は部下がみんな優秀なので。そのまま中小企業に来ても通用しないんですよ。

安田

同じ1,400万円を出すなら新卒の方がいいと?

久野

おそらくこの条件で採用される人って1,000人に1人もいないはずで。どんな有名大企業でも入社できるレベルの人材だと思うんですよ。

安田

確かに。大手でも幹部候補になりうる人材かもしれません。

久野

その世代で飛び抜けた人材が採用できるなら十分元は取れると思いますよ。

安田

本人にとっても大きなリスクですよね。

久野

はい。1,400万円と引き換えにリスクを取っていく人だと思います。

安田

逆にリスクが取れない人の年収は頭打ちになるんでしょうか。

久野

リスクを取れるかどうかで生涯賃金が何倍も変わってくるでしょうね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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