泉一也の『日本人の取扱説明書』第20回「同調の国」
著者:泉一也
日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。
呼吸を合わせ、調子を合わせ、足並みを揃える。日本では「合わせる」ことを大切にする。なので、和を乱すな、自分勝手をするな、空気よめよ。といった否定も強くなる。光(価値)が強い分、影(否定)が濃くなるのだ。
同調性という強みを持つが、同調圧力に屈しやすいのも日本人。周りの様子を見て、感じて、自分の立ち位置や行動を決める特性がある。この「様子見」という観察力が長けているので、比例して気遣いと気配りの能力も高まる。「様子見」能力が低いと気遣いと気配りができないので、様子見能力の高い人たちからうっとうしがられる。そういう人は場を乱すからだ。大縄跳びをすると何度も引っかかる人に腹がたつのと同じである。だから親は子にいう。「周りの子はどうしているの?」「周りの友達はどう言ってるの?」。子供がうっとうしがられ、イジメられないかと心配なのだ。周りと合わせるようにと何世代にもわたって子育てを続けた結果、同調性の文化が日本には生まれた。
この同調性はいい面もあるが嫌な面がある。お互いに気遣いや気配りができて、一体感に満ちた組織が生まれやすい。一方、出る杭は打たれ、空気が読めないと嫌がられ、さらには周りの空気に飲まれ流され自分の意見・考え・軸を失う。こういった国に住みたいだろうか、それとも気遣い気配りのできる人が少なく、組織はバラバラになりやすいが、出る杭は打たれず、空気を読まなくても何もいわれない国に住みたいだろうか。
私なら、どちらも嫌だ。
同調性を持ちながらも、自由に出る杭となれ、空気が読めなくても問題児にならず、周りの空気にも飲まれない。そんなことができるのだろうか。解決策が一つある。それは、自分で「いい空気」を作る側になるのだ。いい空気の作り方をマスターすればいいのだ。しかし、いい空気の作り方を教える人も環境も日本には全くと言っていいほどない。初めての場で人の前に立ってスピーチしようものなら、多くの人は場の空気に飲まれ、「あぁ失敗した!」と気を落とす。誰も何も得られずマイナスだけが残るまさに非生産的な時間になる。これを永遠に繰り返している。日本人の生産性が高くならないのは、このあたりに原因があるのかもしれない。