ビジョンとはまさに中道である。未来を開く価値はどこにあるのか。それは、ワクワク感とスリル感の中道にある。別の言葉で言うと、喜びと恐れの間にビジョンがあるのだ。今、日本の企業では中道がどんどんなくなっている。ワクワク感もスリル感も失われ「無難」がはびこっている。ビジョンがなく、過去の延長線上に無難を探している。
新しい価値とは中道にあるのだが、その中道を探さなくなったのでウォークマンのように世界をオッと言わせるような商品が生まれない。ウォークマンは音楽鑑賞という内の世界を外の世界に持ち出すという両極の間に生まれた。今でも日本には素晴らしい部品や製品は数多くあるのに最終商品が作れなくなった。このまま行くと日本企業は高い技術力や品質があっても、下請け化していくことになる。
下請け国家、日本。これはビジョンではない。ワクワクもスリルもない。真面目で器用な日本人なら下請けは十分やっていけるからだ。ビジョンがあるとしたら、世界から下請けをなくすことだろう。下請けのない世界。つまり、焼畑農業のように安くて真面目な労働力を探し歩くグローバリズムを終わらせて、皆が同じ目線で価値を生み出せる中道世界を日本が作るのである。日本にはそれができる。なぜ、日本はそれができるのか。それは、ここでは教えられないが(教えへんのかーい!)、このコラムを50号全て読んだ方ならわかるはずであるとだけ言っておこう。
泉 一也
(株)場活堂 代表取締役。
1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。
「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。