変と不変の取説 第19回「北朝鮮は崩壊するのか?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第19回 「北朝鮮は崩壊するのか?」

前回第18回は「地方移住とプロ市長」

安田

米朝会談は、破談になってしまいましたね。

破談するべくして破談した、という感じですね。

安田

泉さんの予想では、最終的に核放棄しますか?北朝鮮は。

しないでしょう。

安田

しない?それはなぜ?

最終武器ですから。外交カードの中では「飛車」みたいなもんですよ。

安田

でも実際、使えないじゃないですか。使ったら終わりでしょう。

使えなくても「持ってる」というのが大事。

安田

でも核と引き換えずに、制裁は終わるんですかね?

終わらないでしょうね。放棄しない限り制裁は続く。

安田

今でもかなり国民は苦しそうですけど。彼らが蜂起する可能性もあるんじゃないですか?

どうでしょうね。

安田

核を持っていたって、国民に使うわけにはいかないですよね。

外への体裁のほうが、かなり大事な国なので。

安田

国内よりも?

外に向かって強く出ることが、国民にパワーを示すことになる。

安田

チャウシェスク、カダフィー、フセイン。彼らみたいな最後になることを、一番恐れているみたいです。

「核をもってなかったから、彼らはやられた」と考えてるみたいですね。

安田

ルーマニアのチャウシェスクは、最後どうなったんでしたっけ?

演説中に突然デモが起こって、市民が放棄して、独裁しているチャウシェスクを殺したんですよ。

安田

もしチャウシェスクさんが核をもってたら、市民は蜂起しなかったんですか?

いや、それは関係ないと思います。

安田

ですよね。

はい、まったく関係ないです。

安田

そう考えたら、北朝鮮で国民が蜂起しても、ぜんぜんおかしくないじゃないですか。

まあ、そうですけどね。

安田

北朝鮮は違うと?

ルーマニアとはぜんぜん違うでしょうね。

安田

何が違うんですか?

統制の仕方が違う。

安田

ルーマニアもかなり統制されてたらしいですよ。子供の頃から育てた親衛隊みたいなのに自分たちを守らせてた。

そうみたいですね。

安田

ロシアの秘密警察だって強力でしたけど、突然終わったじゃないですか。

まあ、そうですけどね。

安田

北朝鮮はどうなんですか?たとえば30年後にも、いまの体制が続いてると思います?

私は、意外と続いてるんじゃないかと思ってます。

安田

なんと!そんなに続きますか?

ほどほど食っている状態で、なんとか国の中のコントロールをしながら、ほそぼそとやってるような感じがします。

安田

じゃあ、貧乏なまま続いていくということですか?

はい。貧乏なまんま。

安田

ということは、制裁は続いてる?

制裁は続いてるでしょうね。

安田

それは韓国とか中国が、裏で死なない程度に食糧を援助するってことですか?

そうですね。で、脱北したい人は、脱北していくんじゃないですか。

安田

いま、国の配給だけじゃ食えないんで、ヤミ市場が盛んみたいです。

戦後の闇市みたいに、国民は自力でなんとか食っていくんじゃないですか。

安田

そうすると、いずれは中国みたいになっていくんですかね?経済を自由化して、食うことに関しては「自分でやって」みたいな。

どんどんそうなるんじゃないでしょうか。

安田

国はもう、統制だけをやるって感じですか?

はい。

安田

そっちのほうが豊かになりそうな気がしますよね、中国みたいに。

そうですよね。

安田

中国は共産党が軍と警察を押さえてるんで、好きに稼がせて、しっかり税金払わせて、それで豊かになってます。

北朝鮮が同じことをやるのは、ちょっと難しいかもしれませんね。

安田

それは、なぜですか?

やっぱりトップが世襲してるから。

安田

世襲がネックになると?

世襲して伝説をつくってしまったんで。その伝説が嘘ってバレたら、一気に崩壊する可能性があります。

安田

バレたら崩壊しますか?

嘘の伝説で、自分たちを崇拝させてますから。

安田

なるほど。

北朝鮮はイデオロギーよりも、カリスマを崇拝させている力のほうが強いですから。

安田

みんな「王様に守ってもらってる。食べさせてもらってる」みたいな感じですか?

それに近いんじゃないでしょうか。

安田

でも、もうバレてるでしょ。

だいぶ入ってきてますからね、情報が。

安田

でも中国共産党も、世襲みたいなもんじゃないんですか?

党の中での政治闘争というか、権力闘争があるので、そこでうまくバランスが取れてるんじゃないですか。

安田

権力闘争があったほうが、バランスが取れるんですか?

自民党も昔はそうだったじゃないですか。派閥同士の争いがあった。

安田

その頃の方がバランスは良かった?

今は派閥どうしの政策闘争がなくなって、安倍1強だから自浄作用が起こらない。

安田

じゃあ、日本の自民党よりは、まだ中国の共産党のほうが自浄作用はあると?

そう思いますね。

安田

じゃあ日本も、北朝鮮みたいになっていく可能性はありますか?

伝説とかカリスマみたいなのがないから、ならないでしょうね。

安田

北朝鮮って、ネットやスマホを禁止してるじゃないですか。

はい。

安田

でも絶対に、ネット接続してる人いますよね。命がけで韓国のドラマ見てるらしいんで。

でしょうね。

安田

じゃあ、そろそろバレ始めてるんじゃないですか?

バレ始めてるでしょうね。

安田

それなのに、この先何十年もやっていけるんですか?国民は蜂起しないんですか?

蜂起しないと思いますね。

安田

それは、なぜですか?

まず、お互い監視をしているから。ちょっとでも非国民的なことをやると、すぐチクられる。

安田

それでいったら、ルーマニアも同じだったと思うんですよ。でも、国民が集まってるところで一気に火がついちゃった。

まず、集会ができませんから。

安田

よくやってるじゃないですか、平壌で大勢集めて。

あれはかなり統制されてる。マスゲームと同じ。

安田

ルーマニアだって、「チャウシェスク万歳!」みたいな人を集めてたと思いますよ。なのに、いきなり火がついちゃった。

北朝鮮はチャウシェスクなんかよりも、もっと巧妙に国民を洗脳してると思います。

安田

巧妙な洗脳?

小さい時からずっとストーリーを刷り込まれているわけです。

安田

その洗脳は、想像よりもずっと強烈だと?

私はそう思いますね。束縛と刷り込みの歴史がものすごく長いですから。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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