第164回「ヤパンの国(第6話)」

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

前話(第5話)のお話。
ノザンに隔離されたアナンをはじめとした10人は、天才性を発揮しながら互いに連携をし、「衛兵反逆作戦」を遂行し始めた。衛兵ダントンを反逆のリーダーとなるようけしかけ、武術の天才ゴラの弟子となった衛兵ピエールは脱出の誘導係となった。隔離施設ノザンの脱出が間近と迫った。


ある朝、ダントンが下っ端の衛兵たちを一堂に集め、待遇の不平等を訴えたストライキを始めた。ノザンの管理者たちは突然の出来事に混乱し、アナンたちの監視が一気に手薄となった。その隙をついてピエールが誘導係となって、10人の部屋の鍵を空け、手際良く全員をノザンの外に連れ出した。

追っ手が来ることもなく、アナン一行は無事脱出を果たし安全なところまでたどり着いた。しかし、帰るところがない10人。これからどうしようか。脱出した後のことはほとんど話し合ったことがなく、そこで10人がそれぞれの考えを話し始めた。

カショウ(扇動の天才)が口火を切った。

「俺たちでこのどうしようもないヤパン国を、誰しもが幸せを享受できる国に変えよう!この10人が力を合わせたら必ずできる」

センネンが補足していった。
「カショウがどうしようもないと言っているのは、この国では身分の差を作り、偉い人には権力と富を持たせ、それに誰も不満に思わせないように教育し、さらに不満分子の芽を早く摘む仕組みを作っているという理不尽極まりないことですね」

ケンレン(疑いの天才)は水を浴びせるように冷たく言い放った。

「仮に俺たちで変えることができたとしても、しばらくたったら元のようなどうしようもない国に戻る。人間なんて自分さえよければいい動物なんだから」

パリ(法律の天才)は持論を展開した。
「だから法律があるんだろ。自分さえよければいい輩を厳しく罰し、みんなの幸せの為に生きる人に有利なルールを作ればいいんだよ」

ボダイ(平和の天才)はちょっと待ってよといった感じで、
「暴力はいらない。厳しく罰するということは暴力が発生する。暴力は暴力を生み出すから。争いがおこらない世界をつくりたい。どうやったらそんな平和な国になるか教えて欲しい」

意見が飛び交う中、静かに目をつぶって聞いていたダールタは目を開けて言った。
「僕たち10人で皆がいう国をつくったらいいじゃない」

アナン(心を読む天才)は、皆が同意したとわかり、
「よし、皆で国をつくろう。まずは村づくりからだ。ゼロから村を作れる地を探そう。」

すかさずリホツ(知恵の天才)は、
「であれば、我々は旅芸人になろう。芸人として修行し、各地を回る。そして2年後に集まってこの10人で、ここぞという地を決めて村づくりをするんだ」

10人は旅芸人になるべく散り散りになって、それぞれが思い思いの旅芸人の弟子になった。そして芸人としての修行と各地巡業を経て、2年後、約束の地へ全員が集結した。

(第7話へと続く)
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日本人は部品を作る、製品を作る、商店を作るといった「一つ」を作ることには長けているが、全体の仕組みを作ることは苦手である。民主主義も憲法と法律も資本主義も全てコピペである。

ではなぜ日本人は苦手なのか?この苦手は克服した方がいいのか?続きはfacebookグループの「場活王」にて。

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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