第78回「日本の伝統食材を支える小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「日本の伝統食材を支える小さなブルーオーシャン」


「全国のうなぎ料理人の約8割が使っている包丁」

「石麻呂に吾(あれ)もの申す夏やせによしといふ物そむなぎ取り食(め)せ」

と『万葉集』で大伴家持に歌われた「うなぎ」。

日本人にとって馴染み深い食べ物ですよね。
ちなみに私が世の中で一番好きな食べ物がうなぎです。
と、私のことはさておき、夏バテを防ぐためにうなぎを食べる習慣は、
日本では大変古く、前述したとおり、万葉集にも記述があるくらいです。

本格的に食べ物として定着してきたのは
徳川家康の時代に江戸を開発した際、
干拓によって出来た湿地に鰻が住み着くようになったため、
鰻は労働者の食べ物となりました。

加藤 俊によるPixabayからの画像

さて、そんなうなぎですが、
炭火で焼いているシーンは見るものの、
うなぎをさばいているシーンを見たことはありますか?

頭あたりに五寸釘のようなものを打ち、
背もしくは腹に包丁を入れ、
スススーと開いていく。

ここで問題。
うなぎをさばく包丁ってどんなものでしょうか?
思い出せますか?

うなぎをさばく包丁は「うなぎ包丁」と言います。
日本には料理包丁が約100種類あると言われていますが、
刃渡り24cm、幅約6cmのうなぎ包丁は、
特に難しいと言われる包丁です。

そのうなぎ包丁の「研ぎ」を専門としているのが、
正千代刃物店の岩井 利雄氏。

15歳で浅草の「かね惣」に弟子入りし、
独立してうなぎ専用包丁を専門に製造しています。

岩井氏の手掛けるうなぎ包丁は名だたる名店で使われ、
研ぎも行なっており、50個以上の砥石を使い分けて研いでいきます。

うなぎ包丁は一般的な包丁と違い、刃先が2段になっています。
そのため、刃を研ぐ時も刃先が2段になるよう、角度をつけて研ぐそう。

修行時代、特に技術を教えてもらったわけではなく、
兄弟子たちが研いでいるところ見て盗む。
しかし、兄弟子たちは見られると研ぐのやめてしまうそうです。
出来上がりを見て、どこが違うのか?
それを考えることが多かったそうです。

うなぎ包丁を専門にしている
ということも小さなブルーオーシャンなのですが、
修行時代からの「考える」ということが、
大事な要素なのではないかと思います。

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名称:正千代刃物店
場所:〒343-0025 埼玉県越谷市大沢3丁目
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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