第188回「経営をプロにまかせて安定と成長を追求する小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「経営をプロにまかせて安定と成長を追求する小さなブルーオーシャン」


東京都板橋区の閑静な住宅街の中に、行列のできる洋菓子店があります。

エコール・クリオロ株式会社が運営をしている「クリオロ」。
街の小さな洋菓子店から始まり、現在は洋菓子メーカーとして社員100人以上を抱えている。
創業者はシェフを務めるフランス出身のサントス・アントワーヌ・フィリップ氏と奥さまである岡田愛氏ですが、経営をプロに任せることで企業のクオリティ向上と従業員の安心な働き続ける環境を実現しているといいます。

味覚の違いからの挫折

フランスから来日したショコラティエのサントス氏と、彼の妻である岡田愛氏の二人は日本での生活を決意。まずはプロやアマチュアに洋菓子の作り方を教える製菓学校「エコール・クリオロ」を開校。その後、店舗も作ろうということになったそうです。

南仏プロバンス出身のサントス氏は16歳からショコラティエとして研鑽を積み、「世界パティスリー2009」最優秀味覚賞など数々の賞を受賞してきた人物。ところが、学校で教えるためにサントス氏が最初に試作した「レモンタルト」に岡田氏は「日本人には酸っぱ過ぎる」ときっぱりダメ出しした。日本とフランスでは洋菓子の味の嗜好が全く異なっていたからだ。彼女に「あなたのお菓子はこれが駄目、あれが駄目」とはっきり言われたサントス氏は傷つきながらも、言われるままに作り直してみた。作り直したタルトと、前に作ったタルトとを味比べしてみたら「作り直した方がはるかに美味しい」と納得したと言います。
この挑戦が、お互いが思い描く理想の味に近づく契機となり、結果として彼らの手がける洋菓子は「美味しい」と高い評価を得る。

店舗を増やすのではなく、洋菓子メーカーとしてのクオリティを追求

成果を上げる中で、「もっといい会社をつくりたい」という思いのあったサントス氏は「商人大学校」を受講。そこで知り合った冨田智夫氏に経営の相談をするうちに、経営はプロに任せ、自分はシェフの仕事に専念することを決意したと言います。

現在は冨田智夫氏に経営を譲り、会社のクオリティ向上と安定成長を実現しています。

アルバイトも含めた同社の従業員は約100人。菓子製造、パッケージデザイナー、販売員と職種は異なるが約7割が女性。平均年齢は25~6歳で、50代の夫妻と従業員とのジェネレーションギャップもあるそう。従業員の定着率も高くはない。誰かが辞めて新人が入ってくると、その度に仕事を一から教えなくてはならない。課題はまだまだあるものの、彼らの目標は、店舗を増やすことではなく、洋菓子メーカーとしてのクオリティを更に高め、従業員が安心して働ける環境を提供することだといいます。

組織にはさまざまな仕事があり、多くの役割があります。当然、使う能力も違います。エコール・クリオロ株式会社の成功は、その点を認め、経営はプロに、技術は自分でと役割を分けたことではないでしょうか。

 

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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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