泉一也の『日本人の取扱説明書』第52回「任侠の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第52回「任侠の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

世界を旅してきてわかるのは、日本では欲張ったり、他人をだます人が少ない。逆に日本人はお人好しすぎてそういった人たちの餌食にされている。さらに日本は外国と比べて殺人や強盗といった凶悪犯罪が圧倒的に少ない。OECD諸国の中で犯罪率は最低ランクで、英国や米国の半分程度である。海外から日本に帰ってくると、すっと警戒心が消える経験をしている人は多いはずだ。ちなみに海外の旅行者からは、日本は世界一安全な国だと評価をされている。ここ数年インバウンドが急増している大きな要因だろう。

もともと日本人とは攻撃性が低く、誠実な民族ではないのだろうか。攻撃性を表すような言葉も関西弁の「アホボケカス、われ、しばくぞ!」のように漫才のツッコミレベルで、相手をけなす卑猥な言葉も「お前のカーチャンでべそ」くらい可愛いものである。そういった民族性にも関わらず、なぜ太平洋戦争では奇襲を持って宣戦布告し、アジア諸国に軍事力(暴力)でもって領地を次々と広げていく覇権的な国であったのだろうか。

昭和天皇もナポレオンのような戦闘的な皇帝でなく、穏やかな自然を愛する御仁としか見えない。もしや、もともとはサイヤ人クラスの攻撃性を持ち合わせていたが、敗戦後その攻撃性を失わせるような洗脳や薬物投与をされたのだろうかと勘ぐってしまうぐらいだ。この誰もが感じるような不思議さを教育では取り上げない。あえて触れないようにしている。歴史がここでプツリと分断をされているが、これが敗戦国の宿命なのだろう。

日本は開国した頃から、欧米諸国の軍事力を背景に不平等条約を交わされていた。体のいいカツアゲであり、ピンハネである。彼らと肩を並べなければと、一生懸命働いて経済発展と軍備拡大を果たした。そしてロシアに戦争で勝ち実力を示したことで、アジアの中で初めて列強諸国の仲間入りを果たした。しかし、その成長があまりにも急激だったので脅威と思われた。欧米諸国と同じように大陸に進出するな、撤退せよと干渉され要求され、言うことを聞かないので石油をはじめとした資源の流れを断たれ包囲網を作られてしまった。

もし現代なら、世界中にその理不尽さをうまく宣伝し、世界世論を味方にするが、当時はマスコミも発達しておらず、さらに日本人は誠実さが足かせとなって情報戦が極めて苦手で、世界から孤立してしまった。理不尽な要求をされ続けさらに孤立することで、日本人の誠実さは敗北した。その無力感が攻撃性のスイッチを押してしまった。自分の実力をはるかに超えるフリーザにクリリンが殺され、悟空がスーパーサイヤ人と化したように。

ここからはヤクザな世界である。マフィアではない。ヤクザの命がけの戦いである。アメリカ組に出入りだ。さらし巻いて、ドスもって乗り込めや。その精神で戦った。まさか自分の家族まで巻き添えになるとは思わずに。相手はマフィアなのに、ヤクザ同士の出入りのごとく戦ってしまった。マフィアに手打ちなどあるはずがなく、家族も含めて徹底的に叩かれてしまった。

日本を代表する役者である高倉健はヤクザ映画のスターである。その高倉健は日本人の心を闘争の中でかっこよく表現し、日本男児たちのあこがれの存在になった。渥美清もヤクザな兄貴として多くの日本人から愛される寅さんを演じたが、この二人に共通していたのは「任侠」であった。では、任侠とは何なのか。その問いに、健さんなら「兄さん。言葉にするもんじゃありませんぜ」と静かに言うだろうし、寅さんなら「あっしはね、任侠なんてそんな食えないものなんかよりも、もっとさあ、なんていうの、あれよあれ・・」とケムに巻いただろう。

つまり任侠なんてもんはね、定義をしてしまったらおしめえなんで。心で感じるもんなんだよ。おい、そこのあんた、わかるかい?わかったふりしてちゃダメだよ。オレなんかよ、わからんことばっかりにしてるから、ヤクザな人生をおくっちゃって家族に迷惑ばっかりかけてるんだから。オレを反面教師にしなよ。わからないことはわからねぇてちゃんと言うんだぜ。おぅ、おぅ、やっとこさわかったようだな、じゃあな。えっ、何、お礼、そんなもんいらねぇよ。お前さんのスッキリした顔で十分だい。その顔をふるさとのおっかさんにでも見てもらいな。じゃあよ。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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