第30回 「愛社精神」は幻想だった?

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第30回 「愛社精神」は幻想だった?

安田
最近は「愛社精神」を持たない人が増えてきたと言われます。渡邉さんの周りではどうですか?

渡邉
会社によって極端に分かれているような気がしますね。「この仕事が好き」という感覚を皆が持っていて、生き生きと仕事をしている会社は、自然と愛社精神も育まれるんでしょう。
安田
なるほど。でもそれは、「会社」というよりは「仕事」に対しての愛情じゃないですか? 「愛社精神」ではなく「愛仕事精神」、つまり「仕事愛」があるというか。

渡邉

ああ、確かにそうかもしれません。仕事愛を感じている人は少なくないでしょうが、「愛社」精神を持っている人は珍しいのかもしれない。

安田
新卒で入社したての子は目をキラキラさせているものですが、それは新婚夫婦の仲の良さみたいなもので。

渡邉
まあ、20年連れ添った旦那さんをキラキラした目で見ている奥さんなんて、なかなかいないですからね(笑)。でも、安田さんが作った「ワイキューブ」には愛社精神があったような気がします。皆「ワイキューブ」という場所が好きでしたし。
安田
先進的なこともいろいろやりましたからね。早い段階から「家族を後継者にしない」とか「利益は皆で分ける」と宣言したり。

渡邉
福利厚生もすごく充実してましたよね。権限や待遇もフラットでしたし。
安田
そうですね。そもそも社長と社員で権限や待遇が明らかに違うのに、同じような愛社精神を求めることに無理があるんじゃないかと思いまして。

渡邉
確かに社員は安いビジネスホテルに泊まってるのに社長だけリッツカールトンだったら、「この会社が大好き」とは思えないかもしれない(笑)。
安田
そりゃそうですよね(笑)。年収も社長だけ3000万円で社員は300~400万円だったら、「社員は家族だ」って言われても説得力がないですから。それで全員同じ待遇にしようと給料も増やした結果、潰れてしまったわけですけど。

渡邉
資本主義の中では「愛社精神が育つ仕組み」を作るのは難しいということなのかもしれないですね。
安田
そう考えると、むしろ「俺は社長だから特別なんだ」と考えられる人じゃないと会社経営はできないのかもしれません。
渡邉
確かに。中小企業って、公私混同しているからこそ成り立っている部分もありますからね。会社の経費でプライベートの食事をしたり。
安田
まあ、オーナー社長にとって会社って自分の家みたいなものなんですよね。しかし社員にとっては他人の家なわけで。自分の家だったら愛着も湧くし大事にもしますけど、他人の家をそこまで愛する人はいないじゃないですか。

渡邉
なるほど。社員にとっては他人の家だから、愛してくれとは言わないけれど、せめて居心地よく過ごしてもらえる環境を作っておくことが大事だと。
安田
そう思います。その前提がある程度しっかりあれば、愛社精神も高まるような気がしますね。ちなみに先進国では、「今働いている会社や仕事が好き」という人が平均7割くらいいるらしいですよ。

渡邉
ドラスティックに働いてそうなアメリカ人の方が、自分のいる会社を好きだったりするんですよね。キャリアステップの過程で辞めていくからといって、会社自体が嫌いなわけじゃないというか。
安田
ええ。一方の日本人は3割くらいで、先進国の中では最低ライン。社員に対して愛社精神を求めるわりに、実際に愛社精神を持っている人はものすごく少ないという。

渡邉
確かに日本人は、「我慢して働いている人」が多い気がしますよね。
安田
そうそう。生活のために仕方なく今の会社で働いているだけで、会社が好きなわけじゃない。本当は自分で仕事を選べるはずなんですけどね。
渡邉

うーん、そう考えると日本人にとっての愛社精神って、「給料をもらっている代償」というか、労働の一部として捉えている人が多い気がします。

安田
そういうイメージを持っている人は多いでしょうね。だから「愛社精神を一切求めません!」と打ち出した方が人が集まるんじゃないかと。

渡邉
ああ、確かに。愛社精神を求めない代わりに、お互いに嫌な思いをせずに楽しく働いていけるような配慮さえあれば、快適に仕事ができますからね。会社に忠誠を誓っていた時代からすると、だいぶ変わりましたよね。
安田

そうですね。でももしかしたら愛社精神なんて元から必要なくて、私も含めた皆が「愛社精神を持つべき」と思い込んでいただけのような気もします。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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