これまで発見されなかった生物が見つかると、
新発見の生物として新聞などでも取り上げられる。
だが正確に言うと、
この生物は未発見だったのではなく、
未登録だったのである。
これまで誰一人として目にしたことが無かった生物。
新発見と言われるとそんな気がしてしまうが、
そんな保証はどこにもないのである。
もしかしたら頻繁に目撃されていたかもしれない。
だが目撃した人が「この生物はまだ登録されていない
生物である」という事実を知らなければ、
新発見にはならない。
いやそもそも、
その人たちにとっては新発見でもなんでもなく、
いつもそこらへんにいる生物なのだ。
だが、専門家にとっては話が違う。
それは紛れもなく未確認の生物であり、
世紀の大発見なのである。
では新商品とは何だろうか。
これまでに作られたことのない商品なのか。
あるいは商品としてまだ登録されていない商品なのか。
実は、この質問にどう答えるかによって、
その商品の売れ行きは大きく左右されるのである。
多くの事業者は「業界初」「新しい技術」というように、
自分目線で新商品を捉えている。
業界の人間が見たらこの商品の凄さが分かる。
それは確かに誇らしいことなのだろう。
だが売れるかどうかは別の話である。
もしツチノコが捕獲されたら、
見物客は長蛇の列を作ることになるだろう。
長時間並んででも、ひとめ見てみたい。
それはツチノコという生物が、
とんでもなく珍しい未発見の生き物だからではない。
未発見の生物である、
と多くの人が信じているからである。
顧客にとっての新商品。
それは、新商品であると
顧客が認識している商品のことなのである。
もし私たちがツチノコという未発見生物の情報を
ここまで刷り込まれていなければ、
専門家以外の長蛇の列は出来ない。
普通の人にとってそれは、
ちょっと太いヘビにしか見えないからである。
すでにこの世に存在している商品に、
全く別の解釈を付け加える。
するとそれは、
単なる太いヘビからツチノコへと変化する。
新商品とは、これまでになかった商品ではなく、
これまでになかった解釈を付け加えられた商品なのだ。
新たな解釈を加えることによって、
大きなiPhoneはiPadとなり、
古びた商店街は昭和のレトロ街道へと変わる。
誰にとっての、どういう解釈が、新しく、魅力的なのか。
新たな解釈が、商品を新商品に変え、
新たなマーケットを生み出すのである。
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