逆転する情報価値

毎朝欠かさず日経新聞を読むこと。
それは、ほんの少し前までは、
できるビジネスマンの常識だった。
だが今はどうだろう。
ネットで情報が手に入る。
わざわざお金を出して読む必要がない。
それが大多数の常識である。

さらに言えば新聞情報そのものに
価値がなくなっている。
まず情報の質。これを知らないと
仕事にならない。知ったことで
劇的に業績がアップする。
そんな情報が紙上にあるのだろうか。

さらにはその新鮮さ。
スピードこそが情報という価値の源泉である。
だが紙媒体に印刷され、手元の届く頃には
もはや「過去の出来事」になっている。
「できるビジネスマンは日経を読んでいる」
というキャッチコピーに、悲壮感すら
感じてしまうのは私だけではないだろう。

もちろんこれは新聞だけの話ではない。
ビジネス書しかり、ビジネス雑誌しかり、
ビジネスセミナーしかりなのである。
Googleが世界中のリアル情報を無料化し、
YouTubeでは人気講師による
セミナーが無料で受講できてしまう。

ビジネス書を15分で解説する動画。
人気著者の次回作がいち早く読めるメルマガ。
あらゆる業界の、あらゆる個人が、
無料で自分のノウハウを公開する時代。
この先、情報やノウハウは
限りなく無料化していくだろう。

もはや「何かを教える」「何かを知る」
ということ自体には価値がない。
それだけで他者を出し抜ける時代は終わったのだ。
イヤホンを耳にはめ、スマホを片手に検索すれば、
情報とノウハウで武装された
現代型ビジネスマンの出来上がりである。

では情報はあればあるほどいいのか。
ノウハウを身につければ身につけるほど
有利になるのだろうか。
残念ながらそうはならない。
情報とノウハウが全員に行き渡った時点で、
それはもはや差別化ポイントにはならないからである。

それだけではない。
知った情報、身につけたノウハウが、
個人個人の価値をも奪ってしまう。
人は一度知ってしまったこと、
身につけてしまったことを、
なかったことにはできないからだ。

つまり、すべてのアイデアや戦略が、
身につけたノウハウや知識に
引きずられてしまうのである。
結果、他者と似たような商品、
似たような戦略が横行する。

ある時点を境に、
情報とノウハウの価値は逆転するだろう。
余計な情報を知らないこと、
余計なノウハウを身につけていないことが
価値となるのだ。
近い将来、情報の断捨離は
できるビジネスマンの必須スキルとなる。

 


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