マネタイズの意味

儲からないと事業が続けられないし、
お金がないと生きていけない。
だから儲かる仕事、お金になることを、
やらなくてはならない。
その考えは、半分は正しいが、半分は間違っている。

確かに、利益が出ないと会社は続けられないし、
お金がないと家賃を支払うことも出来ない。
利益もお金も、とても重要なものである。
だが皮肉なことに、
利益を優先することによって利益は損なわれ、
お金を重視することによってお金は離れていくのである。

お金になることしかやらない。
お金になる人としか付き合わない。
こういう人からは、どんどん人が離れていき、
良い仕事も離れていき、結果的にお金も離れていく。
もちろん、これほどまでに極端な人は、
そうそう居るものではない。
だがビジネスの世界では、それが普通に存在するのである。

利益を度外視して会社を経営することは出来ないし、
報酬を度外視して仕事を選ぶことも出来ない。
その考えはとてもよく理解出来る。
だが本当に利益を出したいのなら、
あるいは大きな報酬を手にしたいのなら、
その価値観を少しばかり変える必要がある。

何故ならば、儲けを度外視しない限り、
常識を超える斬新なアイデアは生まれて来ないからである。
たとえばライト兄弟は、
儲けることを考えて飛行機を飛ばしたのだろうか。
ゴルフや野球というスポーツを編み出した人たちは、
儲けるためにその競技を考え出したのだろうか。

いや、そんなはずはない。
もしも儲けることを優先するとしたら、
もっとお金に直結しそうな発明に力を入れるはずである。
深海を探検するのも、宇宙にロケットを飛ばすのも、
好奇心を抑えきれないからである。
資源開拓などというのは、資金を集めるための口実に過ぎない。

なぜGoogleは世界でトップの会社になったのか。
それは、「すべての人に正しい情報を届ける」という、
お金になりそうもないことに、本気で取り組んだからである。
確かに、Googleは今や、広告収入で莫大な収益を上げている。
だがそれは、結果に過ぎない。
マネタイズという技術がもたらした、後付けの結果なのだ。
私たちはマネタイズという言葉の意味を
間違えて捉えてしまっている。

マネタイズとは、マネーになる仕事を見つけ出すことではない。
マネーにならない仕事をマネーになる仕事に変えることを、
マネタイズというのである。
空を飛びたい。速く走りたい。面白いことをしたい。
その欲求と好奇心がアイデアを生み出し、
人間はとんでもない発明を繰り返してきた。
初期の飛行機も、初期のスポーツも、
とてもではないがマネーにはほど遠いものだったはずだ。

ほんの数百メートルしか飛べない、
ほんの数十人しか競技人口が居ない、それで儲かるはずがない。
だが、儲からなければ続けることが出来ない。
ただの遊びを、ただの発明を、
儲かる遊び、儲かる発明に変える。
それこそがマネタイズの本質なのだ。
利益を度外視するビジネスや経営にこそ、
マネタイズは必要なのである。


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