好きの反対は嫌いではなく無関心である。
と言われている。
嫌いという感情さえ持たなくなってしまう。
存在そのものが消え失せてしまう状態。
人間関係においてこれほど
厳しい状態はないのかもしれない。
ではこれを商売に置き換えるとどうなるのか。
顧客に好かれる会社。顧客に好かれる商品。
その反対は何だろう。
無関心な会社、無関心な商品、
ということになるのだろうか。
だが無関心ならまだ救いがある。
商売において最も厳しいのは顧客に嫌われた状態である。
嫌いな店に行こうという客はいないし、
嫌いな会社から買おうという客もいない。
それどころか嫌いな感情をどんどん拡散されてしまう。
商売においては嫌われるより無関心の方がましなのだ。
だがあくまでもましでしかない。
顧客に嫌われるという致命的状態。
商売人はこれを避けようとする。
失礼のない対応。高すぎない商品。
不満をもたれないアフターフォロー。
だが往々にしてそのような商売はうまくいかない。
儲からないのである。
とくに不満がないお店なら顧客は来てくれる。
商品を買ってくれる。
いまだにそう信じている経営者は多いのだろう。
じっさいにそのような店をよく見かける。
嫌われる要素のない店。嫌われる要素のない商品。
それは言い換えるなら好かれる要素もない店、
好かれる要素もない商品だ。
ものや店がない時代ならともかく、
ものと選択肢があふれる時代に、
この商売は成り立たない。
選ばれるために仕方なく、
顧客の損得感情に訴えることになる。
すなわち値引き。
儲からない商売の誕生だ。
人間関係において好きの反対は嫌いではない。
同様に、商売において嫌いの反対は好きではない。
経営者はこのことを肝に命ずるべきだ。
嫌われない経営は儲からない経営なのだ。
では儲かるためにはどうすればいいのか。
やるべきことはただひとつ。
新たな好きをつくり出すことである。
いま好きなお店。いま好きな商品。
顧客の好きを別の好きによって置き換えていく。
好きを凌駕できる感情は新たな好きだけだ。
新しい好きが生まれた時、
人はこれまでの好きを卒業していく。
嫌われない商売ではなく新たな好きを生み出す商売。
重要なのは誰にでも好かれようとしないことである。
みんなに好かれようとする商売は
嫌われない商売に近づいていく。
結果的に誰にも好かれなくなる。
誰に好かれたいのか。
どういう理由で好かれたいのか。
みんなに好かれる商売などない。
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1件のコメントがあります
なるほど~、です。
国語的には「好き」の反対語は「嫌い」ですが、人間関係や人間と商売(サービスと物品)の関係は異なる解釈、気づきありがとうございます。