同質化しない大組織

人類が地上の覇者となるプロセスにおいて、
組織化が要となっていることは間違いないだろう。
いかに頭が良くてもひとりひとりの人間は弱い。
とてもではないが
他の生物を凌駕できるほどの力はない。

だが組織となると人類は強い。最強である。
服を紡ぎ、食料を育て、武器を開発し、
移動手段も手に入れた。
今や人類は自由に空を飛び、宇宙に飛び出し、
原子からエネルギーを取り出すことまで出来る。

すべては組織力によってもたらされた産物なのだ。
だがここでひとつ疑問が浮かぶ。
アリやハチのように
人間以外にも組織を利用する生物は存在する。
なぜ人間だけが、これほどまでに
進化を遂げることができたのか。

もし私がアリのリーダーなら
人間を徹底的に観察し、そのヒントを探すだろう。
だが現実として人間を観察するアリはいない。
それはなぜか。

なぜならそういう役割のアリがいないからである。
女王アリ、働きアリ、兵隊アリなど、
アリ組織にもいくつかの役割がある。
だが人間組織の比ではない。

たとえばアリの組織にはお笑い芸人はいない。
サッカー選手もいなければ、
美容師も、パティシエもいない。
そんな役割は生きていく上で不要だからである。

人類が空を飛べるのも、石油を燃やして走れるのも、
インターネットで繋がれるのも、
不要な役割をする人間がいたからである。

百人の村では空を飛ぶ研究者は何の役にも立たない。
だが十万人の都市ならそんな人間がいてもいい。
いや、そういう人間がいたからこそ、
私たちの文明はこれほどまでに栄えたのである。

拡大する組織。
その中で生まれる不要な役割。
それこそが人類のコアなのである。
だが近代化する社会の中で
私たちはその強みを失いつつある。

大企業がムダな社員を抱えることを株主は許さない。
資本主義の限界がここにある。
国家がムダな支出をすることを国民は許さない。
民主主義の限界がここにある。
大きな組織でなければムダな役割を受け入れられない。
だが会社や国家ではその役割を担えない。

人類の進化を止めないためには
新たな組織が必要なのである。
それは多様性を極限まで受け入れた巨大な組織。
ひとりひとりがバラバラなように見えて、
全体としての一体感を併せ持つ集団。

次世代の覇者になるのはそのような組織である。
誰かが意図してそういう組織をつくるのか。
あるいはネットで個人が繋がることで自然発生するのか。
それはまだ決まっていない。

 

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1件のコメントがあります

  1. 「人類の進化を止めないためには
    新たな組織が必要なのである。
    それは多様性を極限まで受け入れた巨大な組織。
    ひとりひとりがバラバラなように見えて、
    全体としての一体感を併せ持つ集団」
    は目から鱗でした。

    自分の中では、大企業に居た「集団異端主義」の許容です。集団の中にあって個人を発揮する組織というところですが、国家や企業単位以上の組織とうか集団での捉え方は、新たな気付きでした。

    気づきを頂いたコラム、ありがとうございます。

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