雇用のリセット

営業マンとして採用したのに
まったく売上に貢献しない。
本人は頑張っているつもりかもしれないが、
このままではずっと赤字が続いてしまう。
何かを変える努力をしているようにも見えない。

それでも解雇できないのが日本の労働法である。
本人は頑張っている。
それで結果が出ないのは会社の責任である。
となればこの赤字は織り込み済みで
経営戦略を立てるしかない。

すなわち、その分のコストを
黒字社員の利益で賄うのだ。
さらに、先のことを考えるなら
会社にも利益を蓄えなくてはならない。

仕事ができない社員を解雇できない。
ずっと雇い続けなくてはならない。
これを前提に経営計画を立てるなら、
当然のことながら社員の報酬は簡単には上げられない。
いや下げざるを得ないのだ。

だが社員の側から見ればこれは納得がいかない。
とくに利益に貢献している黒字社員。
なぜこんなに利益貢献しているのに
私の報酬は増えないのだ。

もちろん、それはできない社員がいるからである。
さらには新人の教育コストも
会社がもたなくてはならない。
莫大な採用コストと育成コストを先行投資しても、
育った時点でやめていく社員は後を絶たない。

そのコストも当然のことながら
残っている社員で賄うしかない。
それが嫌ならば、育成も、雇用の継続も、
賃金の保証も、会社に求めないことだ。

自らスキルを身につける。
そのスキルによってもたらした
利益から報酬を受け取る。
全員がこのスタンスなら
会社は高い報酬払うことができる。
業績が落ちれば給料を減らせばいいだけだ。

会社が搾取していると感じている社員は多い。
にもかかわらず彼らは正社員であることを求める。
ここに大きな矛盾があるのだ。
会社にリスクを負わせている以上、
一定以上に報酬を増やすことはできない。

企業側は明確にこの事実を伝えるべきだ。
正社員ならば雇用は保証する、社会保険にも加入させる。
その代わりに報酬は据え置きであると。

スキルに応じた報酬を得たいのなら
社員という保護を捨てるしかない。
終身雇用も、最低報酬も、約束しなくていい。
使えなくなったら切ってくれてもいい。
その代わりにやった分だけ報酬をもらう。
それなら可能である。

会社側も、社員側も、
もう一度原点に戻ってリセットするべきなのだ。
社員の収入が増えていく時代は終わり。
安定&頭打ちの社員か、リスク&上限のないフリーか。
まず働く側が自分でこれを決めるべきだ。

 

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1件のコメントがあります

  1. 「仕事を生み出す優秀な人材。
    仕事をこなす普通の人材。
    この両方が会社には必要なのです。」ですが、
    逆に雇用される側は、2択というか選択の自由がある。
    また、雇用ではなく個人事業者、事業(起業)の選択肢もあるので、
    むしろ金太郎アメ型のサラリーマン主体の昭和モデルから、
    脱却するよい時代になっている時期かと思います。

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