雇用を成功させる唯一の方法

社員を雇用することを止めるのか。それとも自らの価値観を入れ替えるのか。経営者はこのどちらかを選ぶしかない。必要な人材を雇用し、的確な指示を出し、無駄なく管理すれば儲かる。そういう時代はもう終わったのである。

まず使える人材は完全な売り手市場である。採用には莫大なコストがかかる上に人材レベルの妥協も求められる。雇用した人材には丁寧な育成プログラムを用意しなくてはならない。自ら率先して学び、成長することなど期待してはいけない。彼らは仕事として割り切っているのだ。もちろん育成期間にも十分な報酬が支払われることは大前提である。

そうやって時間とお金をかけて育てても、ようやく黒字になった頃には転職してしまう。今より条件のいい仕事を断る理由など彼らにはないのである。転職しないのは今より条件の良い転職先がない人たち。つまり最も高値で雇ってしまった会社に居着くことになる。もはや会社にとって社員は資産ではなく負債でしかないのである。

ただし数は少ないがこの法則に当てはまらない会社も存在する。自ら成長し、自らやりがいを持って働き、条件の良い会社があっても転職せず居続けてくれる。そのような社員を抱える不思議な会社が現存するのである。その共通点は会社の売上や利益を経営の最優先事項にしていないこと。社員一人ひとりのビジョン実現が最優先事項だと考えていること。

そんな会社があるのか、そんな経営者がいるのかと、不思議に思うかもしれない。だがこれこそが結果的に会社の業績を高めていく唯一の雇用法なのである。会社は社員一人ひとりのビジョン達成を全力で支援する。その結果として会社のビジョンも達成され業績も上がっていく。

社員にとって一番大切なのは自らのビジョンである。それを全力でサポートしてくれる環境は他に代え難い。だから多少条件が良くても転職しないし、自らのビジョンなので自発的にやりがいを持って取り組み、勝手に学んで成長してくれる。そんな夢のような組織が成り立つものかと多くの経営者は考える。しっかり管理しないと社員はサボる。社員のビジョンなど実現したところで会社は儲からない。そう考えてしまう。

だが管理すればするほど、会社の利益を優先すればするほど、有能な人材は去っていく。この先、人を雇うなら自らの常識を入れ替えるしかない。それが出来ない経営者はもう雇用などしないことである。

 

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