破滅への後追い

大企業はどんどん若手の給料を上げている。初任給30万円は当たり前。中途採用も増やしており20代転職者の報酬はさらに高い。育成コストをかけずに他社で経験を積んだ分、上乗せしても十分割に合うのだろう。一方で40〜50代の人件費は下げ続けている。役職定年、早期退職、子会社への出向、評価制度の見直しなど、あらゆる手段を使ってこの層の報酬を下げている。儲かっている時に抜かりなく人件費削減に取り組んでいるのだ。

あと数年もすれば重たい団塊ジュニア世代はごっそりいなくなる。仮に再雇用しても報酬は現役時代の半分がいいところ。40代はバブル崩壊やリーマンショックの影響でそもそも数が少ない。若手の入口報酬を増やすことで20〜30代を中心とした組織に生まれ変わらせる。それが大企業の組織ビジョンである。

では中小企業はどうか。中小企業にはそもそも組織ビジョンというものがない。人不足で仕事が回らないからとにかく募集する。応募が少ないから選考で妥協する。大手に倣って出来る限り初任給を引き上げる。さらに大手と違って中堅以上の給料も上げていかざるを得ない。仕組みで儲ける大企業と違い、中小企業はベテラン層が抜けると現場が回らなくなってしまうからだ。

有能な若手人材は大手が持っていく。中小が採用できるのは大手に行けない若手と大手からはみ出てしまった40〜50代である。元大企業の社員という肩書だけで採用した人材はいないだろうか。20代の若手だというだけで採用した人材はいないだろうか。これをやり続けると中小企業はどこかで詰んでしまう。

まず20代は必ず辞める。彼らは転職するだけで報酬が増えていくから。肩書に騙されて高値で採用した40〜50代は辞めない。それ以上の報酬を払ってくれる会社がないから。大手の後追いをすると中小企業は必ず破綻する。一刻も早くその事実に気づくべきだ。そして独自の組織ビジョンを描くこと。それなくして中小企業は生き残れない。

やるべきことは明確だ。仕事を細かく分割する。それぞれの仕事に最適なターゲットを絞り込む。ニッチな求人を通年で出し続ける。人と仕事をとことんマッチさせていくことで内的報酬を高めていく。すると人が辞めなくなる。自ら成長を模索するようになる。結果的に収益がアップして辞めないだけの外的報酬を払えるようになる。小さな会社が生き残る方法はこれしかない。

 

 

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