75歳まで働く時代

定年再雇用者の賃金がどんどん引き上げられている。正確に言えば定年前の基準に戻されている。だがその配分は平等ではない。スキルが高い人にはより多くの報酬が支払われ、その分スキルが低い人の報酬が減らされる。言うまでもないが、これは終身雇用や年功序列の復活を意味するものではないのである。

要するにシルバー人材の活用。これに尽きる。60代でもバリバリ仕事ができる人はいるし、全く使い物にならない人もいる。もちろんこれは60代に限った話ではない。これから全ての年代において二極化が起こる。まず20代は報酬が激増する。体力も伸び代もあるこの層はあらゆる職場で需要があるからだ。

だが彼らもすぐにふるいにかけられる。期待通りの成長をすれば報酬は上がっていくが、それ以外の人材は横ばい、もしくは下がっていく。以後、30代、40代、50代、すべての年代において二極化が起こる。高度な現場スキルがある人材と普通の人材とに分けられていくのである。

普通の人材にももちろんニーズはある。労働力が減り続ける日本においては普通に働けるだけで価値がある。だが稼げる金額には限界がある。人不足と共に人件費は上昇するだろうが必ずどこかで頭打ちになる。代わりが効く人材は交換が可能だからである。一方、高スキル人材の稼ぎは増え続けるだろう。

ここで重要なのは求められるスキルの種類である。既存の組織で評価されてきた管理職やホワイトカラー職はどんどんAIに置き換わっていく。逆に現場に近い仕事ほど個人スキルが評価されるようになるだろう。稼ぎ続ける人材でありたいのなら、管理職への昇進など受け入れず現場にしがみつくべきだ。

現場では経験と個人スキルがものを言う。だから大企業は60代の即戦力人材を囲い込もうと必死なのである。年功序列は崩壊しているが終身雇用は形を変えて継続していくだろう。使える人材はより長く、より高い報酬を払って雇用し続ける。普通の人材はコストが抑えられるなら再雇用していく。

20代の住宅ローンは50年返済が標準となるだろう。もはや75歳まで働くことは大前提なのだ。酒もタバコもやらず、体にいいものを食べ、ストレスのたまらない職場を選ぶ。こういう若者がどんどん増えて生活習慣病が激減する。今とは比べ物にならないくらい元気なアクティブシニアの時代がやってくる。
 

 

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