日曜日には、ネーミングを掘る ♯118「置き換える技術2」

今週は。

先回のブログで、ネーミングの対象が
何かしらの新しさを伴っている場合、
その新しさを、なるほどね!と思える
既存のイメージに置き換える必要がある。

と、例をあげて書いたところ、
ささやかな、けれど
励みになる反響をいただいた。
まことにありがたいことである。

そんなわけで、今週も、
同じタイトルで書いてみたい。

今回紹介するクライアントは、
店舗デザイン・設計・施工を行う
P社(本社:東京足立区)さんのケースである。

地元で話題の飲食店をはじめ
こだわりの店舗を数多く
手がけているP社さんであるが、
事業拡大のひとつとして、
一般住宅の分野に進出することになった。

ブランドの当初コンセプトは、
「省エネ・高性能・ローコスト住宅」。
住宅業界というレッドオーシャンのなかでは
あたりまえといえばあたりまえであり、
このままでは競合との差別化はつきにくい。

そこで同社が打ち出したのが、
店舗づくりのエッセンスを
住まいに取り入れることだった。

商業施設のデザインや建築に関わった
経験のある人ならおわかりだと思うが、
お客様の心をときめかせる店舗をつくるには、
アイデアとディテール、そして
これらを実現できる匠の技が必要となる。

こだわりの強いオーナーなら、
寸法がほんの数ミリ違ってもつくり直し。
インテリアに使われる家具や建具も
オリジナルでつくる場合がほとんどであり
1店舗1店舗を作品と呼べる
レベルにまで仕上げていく。

P社さんはまさにこうした店舗づくりを
得意とする会社だった。

そこで培ったワザを、差し色のように
住まいに取り入れようというわけである

ガーデンカフェのようなテラス、
本格バーカウンターのあるリビング、
イタリア料理店のようなキッチン、
インテリアショップのようなエントランス。

思い描くだけで、毎日の暮らしが楽しく
豊かになるだろうことが想像できる。

「お店のようなお洒落な家」

というコンセプトはすんなりと決まった。

しかしながら、この住まいの価値を
一般カスタマーに伝えるのは難しい。

なぜなら、住まいとお店は別物と
考える人がほとんどだからである。

本格の店舗づくりは
上記のように匠の世界なのであるが、
一般のカスタマーにはわからない。
むしろその時々の流行を取り入れただけの
ハリボテのようなもの、
住まいとは真逆にあるものとして
見えているのが普通の感覚だろう。

このイメージを覆さなければ
ブランドとして受け入れられることは
ないだろうと考えた。

ここで、置き換え技術の出番であるが、
今回はなかなかイメージの転換が
できなかった。

ほうほうと辿り着いたのは、

お店のようなお洒落な家=ラテ・アート

だった。

カップに注がれる
1杯のエスプレッソコーヒー。
これが名バリスタの手にかかると、
何ともお洒落で魅力的な作品に変わります。

私たちがつくる家は、
バリスタがつくり出すラテ・アートの世界に
似ているかもしれません。

何ということもない一般住宅が、
店舗づくりの匠たちの手にかかると…。

このようなストーリーを
美しいラテの写真を添えて
企画書の1ページ目に展開。
ネーミングも併せて
経営者に提案したところ、
気に入っていただくことができ、
現在進行中のプロジェクトが
具体的に動き出すことになったのである。

以上、前回に引き続いての
置き換える技術。

過去に考案したネーミングを
改めて振り返ってみると、
結構活用していることに気がついた。

これからも折を見て
紹介していきたいと思っている。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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