変と不変の取説 第5回「OSを変えることはできない」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第5回 「OSを変えることはできない」

前回「新しい通貨と日本の教育」では、人気が通貨の指標になると暮らしは豊かになるとの展望と、時代に合わなくなってきた日本の教育について語り合いました。

安田

会社って、この先どうなると思いますか?

会社ですか?大企業は、ほぼ人工知能くんが中心。規模はでかいままで、人がすごく減ると思います。

安田

大きいままで、生き残れますか?

はい。大量生産しないといけない「物やサービス」って、なくならないですよね?

安田

それは、なくならないでしょうね。

そういう意味では、大企業は存在しないといけない。でもロボットとAIの登場で、働く人は激減する。

安田

末端の仕事は、人間がやるよりも機械がやったほうが「早くて確実」ですもんね。

指示を出す役割も「人間の中途半端な上司」よりAIがやったほうが、間違いなく的確になります。

安田

大企業のように「同じものを大量に作らなければならない事業」の場合は、なおさらですよね。

はい、その通り。

安田

そうなったら、日本の教育って「ズレて来る」と思いませんか?

もうすでに、ズレてますけど。

安田

そうですよね。今の教育のゴールって「大企業で必要とされて、活躍する人材」になることですもんね。

そうです。「言われたことを、着実にこなす人材」=「エリート」という図式だったので。

安田

でもそういう人材は、大企業では要らなくなっていくわけですよね?

必要ない。AIとロボットが取って代わる。

安田

大企業が雇わなくなったら、どうしたらいいんですか?そういう人たちは。

行くところがなくなりますね。

安田

大企業って儲かったお金を、どんどん貯め込んでるじゃないですか。

はい。

安田

あれは「リストラするための資金だ」と言う人がいるんですけど。どう思います?

その通りでしょうね。

安田

では、大企業はこの先、採用もしなくなりますか?

ものすごくクリエイティブな人材は、人工知能をつくっていくために採用すると思います。

安田

それ以外は?

定形的な仕事や「言われたことを、きちっとこなします」という人は、採用しなくなるでしょうね。

安田

なるほど。でも、そうなったら、良いこともありませんか?

良いことですか?

安田

はい。働く場所が減るのは困るんですけど。人件費が大幅に減れば、大企業が提供する商材が劇的に安くなりますよね?

それは間違いなく、安くなります。でないと競争に勝てないので。

安田

そうですよね?たとえばカラーテレビなんかも劇的に安くなる。ユニクロのジーパンや吉野家の牛丼も、もっともっと安くなる。

そうなりますね。

安田

じゃあ、そんなに働かなくても、贅沢しなければ余裕で生きていける。

100円ショップにすごい商品がいっぱい並びますよ。今でも凄いですけどね。「これが100円!」って。

安田

ですよね。個人的には大企業って「市役所」みたいになる気がするんです。

市役所ですか?

安田

はい。ないと困るものを安く提供する。電力会社や水道会社みたいな、公共の事業に近づいていく。

たとえば製薬業界も、新薬の割合が減って来てるんですよ。これからは、単価の安い薬が世の中にどんどん普及していきます。

安田

そうなりますよね。「大量に人間が死んでいた病気」は減ってきてますもんね。

そうなんですよ。だから「生きるためのコストが下がる」というのは正しい。

安田

では大企業は「劇的に人が減って、必需品を安く作り続けて」生き残っていく?

寡占化されるでしょうが、絶対になくなることはないですね。

安田

株主や経営者は儲かるんじゃないですか?人件費が激減するので。

残った会社は儲かりますね。ただし「世界レベルの競争」で勝ち残らないといけませんけど。

安田

なるほど。それも厳しい道ですね。小さい会社はどうなりますか?

大企業の下請けやっていたら、厳しいですね。

安田

人が要らなくなるのと同じように、下請けも要らなくなりますよね?

「そこに頼まないと誰も作れない」という会社以外は要らなくなりますね。

安田

「めちゃくちゃ美味しいパンをつくっている」小さなパン屋さんとか、どうですか?

そういう業態の未来は明るいでしょうね。

安田

でも、たとえ売上100億あっても、単なる大手の下請け会社は不安だと?

大手の下請けに限らず、公共の下請けもかなり不安ですね。

安田

公共工事とかですか?

たとえば今「給食をつくっている会社」が、どんどん倒産していっています。

安田

そうなんですか?

子どもが減って、給食費も少なくなるじゃないですか。そのうえ、子どもたちから「美味しくない」とか言われたりして。

安田

でも「給食をつくる会社」って、なくなったら困りますよね?

なくなったら困るんですけど、普通にやってたら成り立たないんですよ。

安田

儲からないってことですか?

儲からないし、お金がないから人も採用できない。子供が喜ぶメニューなんて開発してる余裕もない。

安田

そういう会社って、下請けなんですか?

役所の下請けなんですよ。

安田

役所の下請けでも、普通にやっているだけでは生き残れないと?

はい。子どもたちの食文化を高めるとか、マナーを高めるとか、料理に興味を持ってもらうとか、そういう価値を提供していけるところだけが残る。

安田

大きな会社が儲かれば、それが「社員や下請け企業にも回ってくる」と政治家は言ってますけど。

それを信じている人は、あまりいないんじゃないですか。

安田

にも関わらず、選挙やったら自民党が勝ちますよね?

そうですね。

安田

国民の総意は「変えなくていい」ってことじゃないですか。

結果的には、そういうことになりますね。

安田

官僚さんは東大出身で頭が良いのに、分からないんでしょうか?このままいったら下からつぶれていくということが。

いや、官僚の人たちと話をすると、分かってはいるんですよ。

安田

分かってるのに、なぜ変えないんですか?

変えないのではなく、変えられないんですよ。

安田

変えられない?

はい。アプリケーションは変えられても、OSを変えることは出来ない。経験してないし学習もしてないから。

安田

そうなんですか?

日本の官僚も政治家も、OSのバージョンアップをやったことがないんですよ。やり方もわからない。

安田

学習する機会はないんですか?

企業で行われてる研修も、アプリケーションの研修ばっかりなんですよ。OSを入れ替える研修なんてどこにもない。

安田

なるほど。日産なんかも、自分たちでは出来ないから「ゴーンさんにやってもらった」という感じですもんね。

そうです。しがらみのないゴーンさんが来て、ズバズバっと切っていったわけです。

安田

じゃあ日本国のOSも、バージョンアップするために、オバマさんあたりを連れてくるとか。

ありですね。

安田

50億くらい払って「日本のOSを10年かけて変えてください」とお願いしたらどうでしょう?

それが可能なら、そのほうが早いですね。しがらみがないので。

安田

日本人は空気を読みすぎなんですか?

しがらみの中で生きている民族なんだと思います。安定している時にはいいんですけど、変化するときはしがらみは逆効果。

安田

トップの決断では変えられないということですか?

しがらみが強すぎて変えられない。

安田

忖度していった人たちの中で、最も忖度が上手い人が社長になっていくんでしょうか?

そうなんですよ!

安田

だったら構造的に「大胆なバージョンアップ」は無理ですね。

OS自体を変えることは不可能でしょうね。トップの選び方を変えるしかない。

安田

シャープも台湾人が社長になったら「あっという間」に黒字化しましたからね。

「今までは何だったんだ?」って感じですよ。

安田

ビルの偽装問題なんかも同じですよね?

構造は全く同じです。利益を出さないといけない。でもそのために全体を変えるのではなく、ちょびっとずつ、削って先延ばししていく。

安田

気づいたら、もう無理なところまで来ていると。

そうなんです。最後に一番しわ寄せがくるのが現場です。

安田

現場は分かっているんでしょ?

彼らには選択肢がないんですよ。がんじがらめで動けない。

安田

選択肢がないので、黙ってコストを削り続けてる?

そうです。

安田

じゃあ、かなりの会社がもう限界まできている?

食品産地偽装問題だって、ひとつ出てくると「他もやってました」ってどんどん出てきたじゃないですか?

安田

はい。

そんなかんじで、ある時を境にどっと出てくるんじゃないですか。

…次回第6回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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