変と不変の取説 第39回「怒りの体罰・理性の体罰」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第39回「怒りの体罰・理性の体罰」

前回、第38回は「福祉と保障の悪循環」

安田

だいぶ前から体罰問題ってあるじゃないですか。

はい。

安田

今日もネットニュースに載ってました。部活で受けた心の傷が大人になってからもずっと残っているという。

潜在意識に残り続けますからね。

安田

もう「殴りながら野球教えるのはダメだ」ってみんな分かってるし、やったらえらいことになるじゃないですか。

そうですね。

安田

でもなくならないじゃないですか。

なくなりませんね。

安田

どうしてなんですかね。やっぱ連鎖でしょうか。「それで自分は強くなってきた」みたいな。

たぶん想像するに「育成熱」が高いんですよ。

安田

育成熱が高い?

「育てよう」という思いがすごく強くて、熱が高くなりすぎてる。

安田

でも、松岡修造は殴りませんけどね(笑)

熱の出方が松岡修造みたいに「さわやかな熱血」じゃないんですよ。

安田

じゃあどんな熱なんですか?

ガチンコで「鍛えたい」みたいな。そういう人は体罰という手段を自然に選んでしまう。

安田

でも、たとえばエラーしたら往復ビンタとか、三振したらげんこつとか、「それで打てるようになったら苦労しない」って思うんですけど。

冷静に考えたらそうですけどね。

安田

だってコーチなんですよ。「なぜ打てないのか」ってことを冷静に判断して、修正してあげるのが仕事じゃないですか。

熱量が高すぎる人はそうなれないんですよ。

安田

僕らが若い頃は営業もそんな感じでした。売れなかったら電話投げつけられたり、蹴飛ばされたり。

昔はそういう人たちがマネージャーとして機能してたんですよ。

安田

はい。確かに機能してました。というか恐怖で動いてましたね。

そういう人って動物的な本能でやってるんですよ。

安田

動物的本能?

動物って自分の子どもが危ないときにガッと噛んだりとか、痛みを伴って学習させる。

安田

動物の場合はトラウマにならないんですか?大人になってから心を病むとか。

聞いたことないですね(笑)

安田

人間も愛情があればトラウマにならないんですかね。たとえば子どもが車にひかれそうになって、そのあとすごく怒ってもトラウマにはならないですよね。

「スクール☆ウォーズ」の先生いるじゃないですか。

安田

はい。ラグビーの。

あの教え子の方と一緒に講演したことがあるんですけど。元全日本のキャプテンだった林さんっていう人。

安田

全日本のキャプテンですか。

はい。その林さんに「体罰を受けましたか?」って聞いたら「めっちゃ受けた」って。で「どうでしたか?」って聞いたら「勲章です」って。

安田

そういう人は自分もやるんですかね。

いや、自分は一切やらないって言ってました。

安田

でも肯定してるんでしょ?

先生から受けた体罰は肯定してました。「掌底でバーンってやられるんだけど、やられることが勲章でした」みたいな。

安田

それっておかしいですよね。

はい。中には傷ついた人もいたかもしれません。

安田

当然いたと思いますよ。それを勲章だと思ってる人が残っただけ。

そうでしょうね。

安田

で、途中でやめた人は「脱落者」って言われて、その人たちは絶対心に残ってるわけですよ。

そうかもしれません。

安田

だから成功した人だけじゃなくて、それでダメになった人の意見も集めるべきだと思います。

そこは同意見ですよ。ただやってる人は動物的本能で動いているから分からない。社会がそれを認めないようにしていかないと。

安田

そうなって来てますけどね。だいぶ変わりましたよ。私が小中学生の頃なんて、先生が殴るのは当たり前で、親もそれを容認してましたから。

この前、息子のテニスの試合を見に行ったんですけど。殴ってる先生はもちろん、怒鳴ってる先生もいないです。

安田

ずいぶん変わりましたね。

はい。昔は「アホ!ボケ!」とか「何やっとんじゃ!ボール見んかボケ!」とか。いまは一切ないですね。

安田

若いんですか?その先生は。

いや、年配の先生も結構いますよ。50代以上の先生とか。

安田

へぇ。意外ですね。ぐっと我慢してるんですかね。

いや。私、観察してましたけど、それが普通というか。

安田

そういう時代なんですね。ちなみに「スポ根」で殴るっていうのは日本独特の文化ですか?

たぶん軍隊から来てると思います。

安田

軍隊教育の延長ですか?

はい。

安田

ちなみに軍隊では今でも殴るんですか?自衛隊とか。

自衛隊もいま殴らないでしょう。戦時中はボコボコに殴ってましたけど。

安田

そうしないと軍隊は強くならないっていうイメージがありますけど。でも自衛隊が殴ってないとしたら、殴らなくても軍隊は強くなるってことじゃないですか。

殴ることに意味はないです。人間は本能じゃないところで進化してきたので。

安田

でもちょっと前まで「根性で水飲まないチーム」とかが勝ったりしてたじゃないですか。甲子園とかで。

そういう時代もありましたね。

安田

最近は「絶対に選手を怒らない」みたいなチームが勝ったりしますよね。

はい。青学の原監督みたいに「ワクワク大作戦」みたいなチームが成果を出してきた。今後はどんどん変わっていくと思いますよ。

安田

「殴らないほうが子どもは育つ」ということで決着がついたと考えていいんでしょうか?

そうだと思いますね。

安田

じゃあ、いずれは体罰的な教え方って根絶されるんですかね。

根絶はされないと思います。

安田

それはなぜ?

さっきも言いましたけど、本能的にやってしまう人が必ず一定数いるんですよ。

安田

じゃあ「これはこの子のためだ」という理由で体罰を行うことはなくなる?

育成目的で、意図的に殴る人はいなくなると思います。

安田

でも本能で殴る人はなくならない。

絶対になくならないでしょうね。

安田

それは煽り運転が減らないのと同じですか?

そうです。怒りがコントロールできない人というのが、必ずいるんですよ。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


| 第1回目の取説はこちら |
第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

感想・著者への質問はこちらから