変と不変の取説 第72回「オペレーションはどこまで残る?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第72回「オペレーションはどこまで残る?」

前回、第71回は「世界のルールはどう変わる?」

安田

最近、ティール組織というのが話題になってまして。

これから、いろんな組織形態が出てくると思います。

安田

日本の大企業って軍隊型のヒエラルキー組織ばかりですけど。どこかで終わりを迎えるんですか?

終わると思いますね。

安田

やっぱり終わりますか。

今の時代に適さなくなっているので。

安田

時代の流れだと。

はい。軍隊型ヒエラルキー組織はオペレーションに向いてるんですよ。ひとつひとつの作業をちゃんと役割分担して繋げていく。

安田

やることが決まってるってことですか?

そうです。わかりやすい例でいうとセブンイレブンとか。オペレーションがしっかりしてますよね。

安田

してそうですね。

ああいうビジネスは軍隊型の組織があると、一気に標準化されてスケールしていく。なので大企業が軍隊型の組織をつくってきたのは至極当然かなと。

安田

だけど今は標準化の価値がなくなってきてるってことですね。

そうです。標準化とオペレーションが必要な部分はあるんですけど、それだけじゃ付加価値を生み出せなくなってきた。

安田

なるほど。でもコンビニやマクドナルドの現場って、付加価値を生み出す必要あるんですか?

生み出さないと生き残れないと思います。

安田

へぇ。

じつはマクドナルドも、今はどんどん現場に権限委譲してやらせてる。

安田

そうなんですか?

はい。そうしないことには個人経営の店に勝てなくなっていくので。

安田

今更できますかね?日本の大企業って、ずっと上意下達でやってきたわけでしょ。それを変えるって可能なんですか。

阻んでいる「頭の固いオヤジさんたち」をどうするかでしょうね。そういう人たちが牛耳ってる限り変わらない。

安田

ですよね。新しい会社なら、最初からティール型にすることも可能なんでしょうけど。

途中から変えるのはすごいエネルギーが必要です。

安田

でも今のままヒエラルキー組織でやってると、優秀な若い人が来なくなります。

そうなんです。若い人は軍隊型組織が嫌いですから。

安田

とは言え、ここまで大きくなった組織が変わっていくとは、どうしても思えない。

変われなければ滅んでいくしかない。

安田

会社ごとですか?

はい。その可能性は大きいです。

安田

今のままの組織形態では無理だと?

マーケットから飽きられるので。

安田

ビジネスとしての価値を生み出せないってことですか?

そうです。コンビニに行かなくても「Amazonがあるからいいや」みたいな。

安田

なるほど。ちなみに本物の軍隊はどうなんですか?軍隊もティールみたいになる可能性ってあるんですか。

軍隊はオペレーションがしっかりしてないと機能しません。トップが意思決定して「イエッサー」で動かないと。議論してる場合じゃないので。

安田

確かに。「手榴弾投げろ」って言われて「いや、ちょっと考えさせてください」「いまはそのタイミングじゃないと思います」みたいなのは成立しないですよね(笑)

しないです。

安田

じゃあ軍隊は今の組織のまま残っていくと。

軍隊がある限りそうでしょうね。

安田

軍隊は残り続けますか?

残るでしょう。パワーバランス的に必要なので。軍事力が抑止力になったり外交の手段になったり。

安田

なるほど。じゃあ自衛隊から民間企業に移る人とかは、どうなっていくんですか?

私のまわりには自衛隊出身で優秀な場活系の人が何人かいますよ。

安田

それって軍隊型の組織に染まってる人たちでしょ?

軍隊というのは愛国心とプライドでしっかりエンゲージしてる。だから「愛社心を高める」とか、そういうのが得意なんですよ。

安田

なるほど。つまり普通の人と生み出す「価値」の部分が違うってことですね。

そうです。ヒエラルキーでうまくやっている要素もあって、それを転用できる。

安田

じゃあ企業の中でもヒエラルキーはゼロにはならない?

必要最小限は残ると思います。

安田

たとえばどういうところに?

たとえばルールを決めてやる作業なんかは、ヒエラルキー型でオペレーションがしっかりしてないと機能しません。

安田

公務員とか?

公務員の場合は「みんなが平等」というルールを標準化しているので。組織も必然的にそうならざるを得ない。

安田

でも教育を標準化しちゃうと「付加価値を生み出す人材」は育てられないですよ。

新しい価値は生み出せないですね。

安田

じゃあそこは切り離す必要があると。

はい。価値を生み出す組織は別にあって、あくまでもそれをちゃんとオペレーションするのが公務員の役割。

安田

なるほど。やっぱりオペレーション部分は残す必要があるわけですね。

はい。たとえば警察とかにはオペレーションが必須です。

安田

確かに。警官が勝手に判断したら困りますもんね。

そうです。

安田

じゃあ「今までにない新しい教育を考える」ってのは、公務員じゃない人がやる?

公務員はできないですから。

安田

ちなみに「ヒエラルキー型はもう古い」って発想はいつ頃生まれたんですか。

インターネットのベースがヒエラルキーじゃないので。「全員が発信します」というシステム。そこにSNSが加わってさらに強くなった。

安田

なるほど。やはりネットの影響ですか。

はい。今後ネットとコンピュータがさらに発達すると、オペレーションは全部そっちがやるようになります。

安田

え!じゃあ、いわゆるオペレーション的な仕事は、人間がやらなくなるってことですか?

激減すると思います。

安田

お店の販売員とかも?

どんどん無人化するでしょうね。残るのはコンシェルジュみたいな人だけ。

安田

単なる販売に人はいらないと。

たとえばコンビニなんかだと、並べ方も売り方もぜんぶ決まってますよね?

安田

たしかに。べつに人間じゃなくてもいいですもんね。

そうなんですよ。今後AIが進化して行ったらオペレーションという仕事がなくなる。

安田

じゃあオペレーションで成り立ってる会社は、トップ以外は食えなくなる?

いずれはトップもAIに置き換わるんじゃないでしょうか。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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