第16回 ガーメントデザイナーの「最高の瞬間」

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第16回 ガーメントデザイナーの「最高の瞬間」

安田
今日は「ガーメントデザイナーのお仕事」について深掘りさせていただきたいと思います。お庭作りをやっている中で、中島さんが一番楽しい仕事って何ですか?

中島
「どういうお庭を作ろう」と、イメージを膨らませている時が一番楽しいですね。今までやったことのない新しい内容だったりすると、なおワクワクします。
安田

へぇ。そうやってイメージを図面にして、実際にお庭を作っていくわけですよね。そもそも思い通りに作れるものなんですか?


中島
そうですね。駆け出しの頃はなかなか難しかったんですが、経験を重ねる中で、思った通りに描けるようになりました。
安田
なるほど。つまり「思い描いたままの庭が完成する」わけですね。でもそう考えると、「完成した瞬間」の方が嬉しいような気もしますけど。

中島

完成した時ももちろん嬉しいですし、お客様に喜んでもらった時も嬉しいです。

安田
なるほど。ちなみに、イメージが膨らむお家とそうでないお家があるんですか?

中島
もちろんどんな家でも全力で臨みますが、広いお家の方が「庭を見るポイント」が多い分、やりがいはあるかもしれません。
安田
なるほど。ある程度の広さがあった方が構想は広がると。

中島
ええ。あとは、自分の提案がそのまま通った時はやっぱり楽しいですよね。というのも、僕はいつも、ファーストプランは予算を気にせず作るんです。建物や庭の敷地を見て、僕がベストだと思う庭をデザインする。
安田

ああ、なるほど。それをそのまま作らせてもらえたら、確かに楽しそうです。とはいえ、予算に限らずいろいろな制約が入ってきて妥協せざるを得なくなっていくんじゃないですか?


中島
ええ、もちろんいろいろなご事情がおありですから、調整が入るのは仕方がないと思っています。あとは、そもそも庭よりも外構を重視される方も多くて、そういう場合はアルミ製品がメインになってきます。
安田

へぇ、そうなんですか。「お庭」の対になるのが「アルミ製品」なのがすごく不思議な気もしますが。つまりエクステリアを石や木などの自然物で考えるか、アルミ中心で考えるか、ということですか?


中島

仰るとおりです。庭よりも外構をメインで考えられる方は、アルミの製品をご希望されることが多いですね。

安田
門や柱もアルミで作るということですか?

中島
ええ。アルミ屋さんがセット商品として、門はこれ、門柱はこれ、と簡単に図面が描けるものを販売しているんです。そういうパターンの場合は、庭というより少し植栽が入る程度で。
安田
ふむ。つまり少し植栽が入る程度では、「庭」とは呼べないということですか?

中島

僕個人の感覚では、「庭」ではないかもしれません。本物の木を植えるとしても、1本ぽつんと植えるだけでは、「庭」とは言えないかなぁ。

安田
そうするとお庭の条件としては、木が相応の本数植えられていることになるんでしょうか。

中島
うーん、それも1つの条件ではあると思いますが、複数本あればいいということでもなくて。同じ間隔で規則正しく植えただけなら、それは僕の中では「庭」ではなく「植栽」なんです。
安田
そうか、あまりに人工的過ぎるとそれは「庭」ではないと。確かに中島さんの庭は、人工物と自然が絶妙に調和しているのが特徴ですもんね。

中島
ありがとうございます。そう考えると、「庭」という明確な定義があるわけではなく、作り手ごとに考え方が違うんでしょうね。
安田
なるほどなぁ。つまり、中島さんのお庭は中島さんにしか作れないと。そういう話を聞くとなおさら、自分の感性を活かしたお庭が完成した時は、さぞ感無量だろうなと思います。

中島

それは本当にそうですね。もちろんお客様のご要望を叶えられている、というのが大前提ですけど。

安田

お客さんの要望を叶えつつ、ご自身も納得いく美しいお庭。それが完成した時が最高に嬉しい瞬間ということですね。


中島
ええ。まさに最高の瞬間ですね。

対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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