第35回 経営の極意は、ビジネス書からは見つけられない?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第35回 経営の極意は、ビジネス書からは見つけられない?

安田

中辻さんは経営の勉強をされているんですか? 本を読んだりセミナーに行ったりとか。


中辻

起業当時は、お金に関するセミナーによく行っていました。利益とか人件費とか、お金の計算方法について勉強していましたね。

安田

まずはお金のことから始めたわけですね。それはなにか理由があったんですか。


中辻

そもそも会社を始めたときに、初めて「試算表」とか「決算書」というものがあるのを知って。当然ながらその見方も全くわからない。それでコレはまずいぞ…となりまして(笑)。

安田

なるほど(笑)。


中辻

で、今度は会社が徐々に大きくなることで試算表の仕分けが増えますよね? すると、これは何のお金なんだろう? どういう用途で国に支払っているんだろう? と疑問に思うことも増えて。だからちゃんとお金のことを理解したいとセミナーに行って。

安田

いやあ、偉いですよ。何十年も社長をやっているのに、お金のことなんてあんまり考えていない人も多いのに。決算書すら読めない経営者だっていますからね。


中辻

そうなんですかねぇ。まあ私もそんなに得意ではないんですけど(笑)。

安田

いやいや、きちんと学ぼうという姿勢が素晴らしいと思います。確かに起業したばかりのときと、少し大きくなってきたときでは、いろいろと見方も変わりますよね。


中辻

ええ。起業したばかりでまだ経営に慣れていなかった頃って、短いスパンで「黒字だ、赤字だ」と一喜一憂していたんですよね。でも会社はずっと続けていかなきゃいけないわけで。

安田

単年度だけを見るのではなく、長期的に見た投資なども必要になってきますからね。


中辻

仰る通りです。税理士さんにも、「単月や単年じゃなくもっと長期的に見れるようになったほうがいい」と教えていただきました。そういうこともあり、会社や組織としての考え方・成長の捉え方などについては、積極的に学ぶようにしています。

安田

なるほど。では営業やマネージメント、マーケティングといった面はどうですか? どのように勉強されましたか。


中辻

それが…全く勉強していません(笑)。全部、自分の感覚や価値観でやっています。

安田

ほう、そうなんですか。じゃあ、ビジネス関連の本を読んだり? 読書好きでしたよね、中辻さん。


中辻

私、小説は好きなんですけど、自己啓発本とかビジネス本はあんまり得意じゃないんですよね。あ、安田さんの本は読みましたよ!

安田

ありがとうございます(笑)。実は私も、ビジネス書を書いていながら、ビジネス書はあまり読まないんですよね(笑)。


中辻

そうなんですね(笑)。私は経営者の方が書いた「経営者になるまでの話」というのは好きなんです。それこそ安田さんの本のように、ストーリーがしっかりとあるもの。

安田

ビジネス書って「ハウツー本」的なものが多いですからね。


中辻

そうですそうです。「こうしたら売れる!」みたいな内容は、苦手です。

安田

ビジネス書は基本的に「どうやったら儲かるか」の答えが書かれているから、経営者は一生懸命読むんですよ。その答えを求めて。でも中辻さんとしては、そこから答えを得ることには前向きじゃなさそうですね。


中辻

そうですね。というか、これは何の忖度もなく言うんですが、前に安田さんが仰っていた言葉が私の中で妙にしっくりきていて。それが「お金を払ってでも買いたいと思ってもらえるものを売ればいいだけ」っていう言葉だったんですけど。

安田

無理やり売ろうとするんではなく、高くても買ってもらえるくらいのものを考えればいい、と言ったときですかね。


中辻

はい。そうやってファンを増やすんだよ、って仰っていて。私、それこそが「ものを売ること」のすべてを表していると思っているんです。そのひと言がすごく腹落ちしているので、ビジネス書や啓発本に書かれていることが全然響かないのかも(笑)。

安田

そうでしたか。それは嬉しいですね。


中辻

だから押し売りもしないし、売ろうと思って売っているわけではないというのが本音です。私は価値のあるサービスが提供できているので、買いたい人が買ってくれればいい。そう思っています。

安田

経営に限らず、世の中のすべてのことは人間相手の心理ゲームみたいなものですからね。そういう意味では、ビジネス書よりも小説を読んだほうが、よっぽど人間の心の機微の勉強になる気がします。


中辻

同感です。あとはポスティングスタッフさんの面接で年間何百人もの人とお話をしているじゃないですか。そうすると、ちょっと喋っただけで相手がどんな人なのかわかるようになってきて。

安田

へぇ、そうなんですか。


中辻

さらに言えば、相手の性格や雰囲気に合わせて伝え方を変えられるようになりましたね。この人にはこういう話し方をしよう、この人にはこういう言い方が伝わりやすいはず、というように。

安田

すごいですね。それこそ営業の極意ですよ。


中辻

そこが30代になった自分の中で、少し進歩したところかと思います。それこそ20代の頃って、社長の久保さんに対しても「自分は間違っていない」と主張を押し付けるばかりで。ときに久保さんの逆鱗に触れてしまうこともあったんですよね。

安田

そうだったんですね(笑)。


中辻
でも最近は、久保さんの人間性とか考えもよくわかるようになり、久保さんにきちんと伝わる言い方を心がけているので、もうぶつかることはほぼなくなりました!
安田
すごいじゃないですか。大進歩ですよ(笑)。それにしても、聞けば聞くほど、久保さんと中辻さんって正反対のタイプの経営者という気がします。

中辻

確かにそうかもしれません。久保さんは何事においても合理的な判断をされるタイプですよね。

安田
ええ、儲かることにしっかりとお金をかけている印象です。一方の中辻さんは自分の頭を使って考え抜くタイプ。全く違うから相性は良いような気もしますが、実際はどうですか?

中辻

どうなのかなあ。揉めないために、お互い深く干渉しすぎない、というのが大前提にありますけど(笑)。

安田
笑。というか久保さんって、どちらかというと「投資家」的な思考が強いと思うんですよね。

中辻

あ、そうかもしれません。そもそも私たちは「ものを売ること」に対して全く違う考え方で。久保さんは「儲かる・儲からない」で判断される。でも私は「自分が売りたいと思えるもの」じゃないと信念を持って売れないと思っています。

安田
そこは私も同じですね。自分が良いと思わなければ売りたくないです。特に今って「好き」からスタートしたビジネスのほうが長続きする時代だと思っていて。儲かるビジネスはみんながすぐに追随するから、あっという間に儲からなくなるんですよね。

中辻

同感です。「好き」で始めた事業じゃないと、なぜ売れなくなったのかがよくわからないんですよ。それを好きでいてくれるお客さんの心理がわからないから、ウケなくなった理由が理解できないというか。

安田
まさにそうですね。ということは経営を成功させたければ、ビジネス書に書いてある「答え」をなぞっていてはダメだぞ、と。信念を持って「自分の好きなもの」を売っていくのがいいってことなんでしょうね。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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