変と不変の取説 第77回「地方を変えるのは誰?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第77回「地方を変えるのは誰?」

前回、第76回は「子会社の社長は誰?」

安田

どの国でも大都市の人口は多いですけど、日本の東京一極集中ってちょっと異常じゃないですか?

ちょっと異常ですね。

安田

そうですよね。ニューヨークやロサンゼルスも人口が多いですけど、とはいえ「やっぱりテキサスが好き」って人もいて。適度に人口が分散してる。

そうです。

安田

やっぱアメリカは国が大きいからですか?それとも他に理由があるのでしょうか。

日本の場合は、まず地方が面白くない。

安田

面白くないですか。

若い人たちには刺激がない。

安田

たとえばアメリカだったら、ニューヨークにないものがマイアミやハリウッドにある。そういうものがない?

そうそう。マイアミならマイアミを、テキサスならテキサスを、彼らは楽しんでるじゃないですか。

安田

そういうイメージですね。「俺はここが好き」みたいな。

自分たちの土地とか、文化とか、歴史とか、スタイルとか。そういうのが好きなんですよ。でも日本の地方ってそういうのがあまりない。

安田

あまりってことはゼロではないと。

一部にはあります。たとえば関西人があまり東京に行かないのは「お笑いの文化」とか「ボケ・ツッコミの文化」みたいなのがあるから。

安田

なるほど。

「東京はなにすましてんねん」みたいなのがあって「行こう、行こう」とはならない。

安田

確かにそういうのはありますね。

でも全国の地方に行くと、そういうのがなくて。面白くない。

安田

私は大阪出身ですけど、最近は大阪も「元気ないな」って感じます。

いまはそうですね。

安田

子どもの頃は「大阪独自の文化」みたいなのがありました。今は1地方都市って感じ。

そうなっちゃいました。

安田

新大阪駅なんてただの地方ステーションです。

そうなんですよ。独自の文化みたいなのがなくなってる。どこの地方に行ってもみんな同じような感じ。

安田

福岡ぐらいですかね。「この街が好き」って雰囲気と、独自の文化を感じる都市って。

福岡はいいですね。

安田

なぜ地方都市はこんな風になっちゃったんでしょう。

街のスタイルを標準化、画一化してるから。

安田

それは昔からですか?

藩のときはよかったんですよ。藩主がいて自分たちのお国柄みたいなものがあった。

安田

そうですよね。愛国心というか、愛郷土心みたいなのがありましたよね、昔は。

ありました。で、廃藩置県したときに中央集権にして藩主を全部クビにした。

安田

クビにしたんですか?

はい。そこにいた士族の人たちも全員クビ。だから士族の反乱が起こったわけです。

安田

ああ、それが西郷さんの起こした乱ですね。

そうです。廃藩置県は完全な標準化を目指していましたから。

安田

じゃあ、その頃からどんどん標準化が進んでいったと。

そういうことです。

安田

で、地方都市がどんどんつまらなくなっていった。

標準化されてどこも同じようになっていきました。

安田

とはいえ昭和の初めぐらいまでは、それぞれの都市に趣があった気がします。

今よりはぜんぜんあったでしょうね。

安田

新幹線や高速道路ができた影響でしょうか。

その影響は大きいでしょう。団地も増えて、マイホームも似たような感じになって、似たようなものがブワーッと衣食住ぜんぶで広がった。

安田

たとえばアメリカだったら、ニューヨークとシアトルで家の建て方が違います。気候も文化も違うので。その土地に合ったデザインというか。

そういうのをめちゃくちゃ大事にしてますから。

安田

ですよね。

とくに住居は大事にしてます。

安田

日本みたいに「似たような家」を建てまくる国って、あんまないですよね。

ないです。異常です。

安田

そもそも巨大な住宅メーカーがないですもんね。

ないです。日本だけですよ。積水ハウスとか。

安田

どうしてこうなったんですか?

国策ですね。

安田

え!国策ですか。同じ家に住まわせると、何か国としてメリットがあるんですか?

団地をつくったときに「これがわれわれの豊かなモデルです」ってプロパガンダしたんです。「冷蔵庫があって、テレビがあって、これが一家団らん2DKです」みたいな。

安田

天皇陛下が団地を見に来てましたもんね。

はい。「夢の2DKに住みたい」と思わせるプロパガンダ。

安田

田舎の一戸建てのほうがいいと思うんですけど。

憧れさせるのが大事なんですよ。

安田

団地の2DKに憧れてたんですか?昔は。

都心に出て来させるため。都心では一軒家は持てないので団地に住むしかない。

安田

でもいまは団地に憧れて東京に出て来ないでしょ?

今は憧れてじゃなくて、地方が面白くないから出てくるんですよ。「こんなとこいたくない」っていう。

安田

東京ってそんなに面白いですかね。大阪や名古屋にも似たような店がありますけど。

東京ってテレビの中の世界なので。役者やタレントがいっぱいいるし、彼らが行った店とか経営してる店もあるし。

安田

じゃあ東京はテレビの中って感じですか。

そういうイメージですね。

安田

今後はどうですか。地方に行くと空家もいっぱいあって、食っていくぐらいの仕事があれば、そっちがいいって人も出てきそう。

面白い地方には人が増えてますね。ただ私の感覚でいうと9割はつまらない。

安田

面白い地方って、たとえばどういうとこですか?

福岡もそうですけど。たとえば古くなった棚田をみんなで再生しようとしてるとか。

安田

そういうのは面白いですね。中途半端な地方都市が一番つまらない。人が集まる面白い場所をつくるには、何が必要なんですか?

面白い企画をつくる面白い人たちが必要です。

安田

似たような都市ばかりですもんね。ああいう駅前区画って誰が決めるんですか?

政治家と官僚クラスの役場の人。だから全国似通ってくるし無難なやつしかできない。

安田

でも面白い街もあるんですよね?

地方行政には、たまに異端児がいるんですよ。そういう人が面白い人を連れてきて、変なことを始めちゃう。

安田

そういう人はまだまだ少ないんですか?

滅多にいません。珍獣扱いです。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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