原因はいつも後付け 第19回 「SNSは楽に集客できそう、という誤解」

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第19回》SNSは楽に集客できそう、という誤解

さて、今回はちょっと趣向を変えて私のお客さんの話をさせていただきます。

今から3ヶ月ほど前の事だったでしょうか。
ある店舗のオーナーさんが、私にこんな事を話してくれました。

「グルメポータルの有料掲載を止めた」
「SNSでお客さんがお客さんを呼んでくれるから宣伝費がゼロだ」と。

このオーナーさんとはもう2年以上仕事のお付き合いがあるのですが、開業当初は集客にとても悩んでいて、一緒に試行錯誤を繰り返したのをよく覚えています。

それが今ではゼロ円で集客ができているという事実。
私としてもこんなに嬉しい報告はありません。

ただ、一方で「SNSで集客できない」と悩んでいるオーナーが世の中に沢山いるのも事実。
一体、この違いはどこにあるのでしょうか?


お客さんがお客さんを呼んでくれる状態になっているというオーナーのSNS。
そのお店が発信している内容を見てみると、ある事に気が付きます。それは、

「お店の宣伝がほとんど入っていない」という事。

お店のSNSと言うよりは、むしろオーナー個人のSNSに近い使い方なのです。
オーナーさん曰く、
「SNSで集客しようとは元々あまり考えていなかった。」
「地域の人たちが楽しめる内容を考えて情報を出していた。」との事。

集客目的で使っているお店が集客できず、集客しようとしていないお店が集客できる。

なぜこんな一見矛盾したような事が起きるのか?
私はここに集客を考える上での情報発信の大きなヒントがあると思うのです。

「SNS集客」という言葉。
この言葉を「SNSでお店の宣伝をすればフォロワーが来てくれる」と勘違いして使っているお店を未だにたくさん見かけます。

ここで思うのは、いつの時代、どんなツールであったとしても、成果を出せるお店と出せないお店は、基本的に変わらないと言うこと。SNSで集客できないお店は、メール配信が全盛の時代であっても集客はできなかっただろうと思うのです。

なぜそう思うのか?
それは、自分が得するために発信しているのか、フォロワーさんの役に立とうと思って発信しているのかという考え方のスタート地点がそもそも違うから。

自分が得するための発信。
これは、SNSだけでなく、他のツールを使ったとしても集客効果はほとんどないでしょう。
なぜなら、フォロワーさんはセールスされている事を敏感に察知するから。

一方、フォロワーさんの役に立つ発信はどうなのか?
実は、こちらもすぐに集客できる訳ではありません。
なぜなら、集客しようとしていないから。

ただ、この2つ発信には大きな違いがあります。
自分が得するための発信にはなくて、フォロワーさんの役に立つための発信にはあるもの。

それが、フォロワーさんからの信用の蓄積。

SNSは安易な集客ツールではなく、フォロワーさんからの信用を積み重ねるための発信の場所であると考えること。

SNSにおける集客の成果の違い。
それは、これまでの有料広告と同様に、SNSでお客さんを「集めよう」としたのか、SNSでフォロワーさんに信用してもらった結果、お客さんが「集まった」のかの違い。

お客さんを集めるという意味で「集客」を考えている限り、SNSで集客の成果を上げることは難しいのではないかと思うのです。

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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