さよなら採用ビジネス 第14回「なぜ企業は副業を禁止したがるのか」

このコラムについて

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回のおさらい ①安定を求めるなら社員を辞めたほうがいい? ②一社員として考える、顧客の買い値と信頼度 第13回「本当の定年は40歳」


安田

中小企業の経営者さんに聞くと「うちは終身雇用だよ」と答える人が結構多いんですよ。でも、どうなんですかね。今後、終身雇用などというものを「そもそも約束出来るのか」ってことなんですけど。

石塚

答えで言えば「ノー」でしょうね。約束できないと思いますよ。

安田

そうですよね。

石塚

経営者として「雇用を絶対に維持できる」と言える時間軸って、安田さんはどれぐらいだと思います?

安田

1年ぐらいじゃないですか。

石塚

すごい短いですね。

安田

いや、昔はもっと長いと思ってましたよ。それこそ生涯ぐらいに思ってましたけど。

石塚

当時はね。

安田

はい。でも今は正直言って、自分の1年後の収入だって確信が持てないです。今売れてる商品が売れなくなるかもしれないし、そうなったら売れる商品をまた考えるしかない。

石塚

なるほど。そこはすごく同感です。でも80年代までは“ジャパン・アズ・ナンバーワン”なんて言われて「まさか我が社が倒れるなんてことあり得ない」みたいなムードでした。

安田

確かにそういうムードでしたね。「大きい会社に入ればもう安泰」みたいな。

石塚

はい。倒産というのは中小企業以下の話っていうのが常識でした。だって昔は大型倒産っていうと社会の一大事件だったじゃないですか。

安田

90年代に証券会社とか銀行とかが潰れた時は、社会がパニックになりましたよね。

石塚

はい。まさに青天の霹靂でした。

安田

今ではもう想定内の話ですよね。シャープとか東芝とかも潰れてはいないですけど、シャープなんてもう外資になっちゃって。既存の雇用契約なんてなかったことになるわけじゃないですか。

石塚

はい。おっしゃるとおり。

安田

これからは「会社がなくなる」という現実もあり得ますし、たとえ会社がなくならなくても「事業の寿命が尽きる」ということもあり得ます。そうなったらその事業に従事する社員を全員雇用し続けるなんて不可能です。

石塚

はい。事業そのものが無くなることもありますし、その事業で必要なスキルが変わってしまうこともあります。

安田

そうですよね。

石塚

例えば10年前までは、試算表を作れるというのは凄いスキルでした。会計事務所の面接の時に「安田君は試算表を1日にどれぐらい作れるかな?」「私は結構得意で5社ぐらい作れます」「すごいな~君。それはスキルあるなあ」みたいな。そういう会話があったわけですよ。ところが今は会計ソフトがどんどん進化して、必要な数字を入力してエンターキー押すと素人でも試算表ができあがるという。

安田

ですよね。

石塚

結局、技術の進化・イノベーションによって、人の専門性などというものも非常にあやふやじゃないですか。

安田

はい。かなり、あやふやですよね。

石塚

終身雇用っていうのは会社側から見れば「自己資金との見合い」、働き手から見れば「世のイノベーションとの見合い」、結局どちらサイドから見ても、そこから逃げることは出来ません。

安田

でも、今の会社では必要なくなったけど、他の会社に行けば「自分のスペシャリティ」が必要とされている、ってこともありますよね?

石塚

もちろん、その可能性はあります。会社や業界によって、テクノロジーやビジネスモデルは異なるので。

安田

一つの会社で、自分のスキルが永久に必要とされるとは限らない。

石塚

限らない。

安田

にも関わらず、やっぱり今のところ終身雇用を求める人が多い。

石塚

多いですね。いずれは自分の首を絞めることになるのですが。

安田

会社の側もそれをアピールしますよね。

石塚

はい。「ウチは終身雇用守ってる」と胸張って言いますね。

安田

私、そういう社長さんに言ったことがあるんですよ。

石塚

ほう(笑)何を言ったんですか?

安田

その会社は副業禁止らしくて「その代わりウチは終身雇用だ」って言うわけです。だから「何歳までですか?」って聞いたら「60まで」って言うから「それは終身雇用とは言わない。今の時代、終身雇用と言うのなら100歳まで約束しないとダメだ」と。

石塚

また、極論ですね(笑)

安田

でも現実そうでしょ?終身と言うなら生涯保障してよと。

石塚

生命保険みたいですね(笑)。

安田

私の主張は「100歳まで約束出来ないんだったら副業は許可するべき」というもの。

石塚

まあ100歳は極端ですけど。70歳くらいまでだったら。

安田

だって副業禁止して、その会社でしか通用しないスキルを身につけさせて。それで60歳とかで放り出されたら、その後どうするんですか?石塚さんはどう思います?

石塚

安田さんらしいですけど、死ぬまで面倒を見る必要はないと思いますよ。まあ、せめて65歳かな。そこらへんまで約束出来れば終身雇用と言ってもいいのでは。

安田

でも、65歳で辞めた後、年金出ますか?年金だけで食えますか?

石塚

いや、無理でしょうね。

安田

やっぱり働かないといけないでしょ。でも定年後に10年15年食えるだけの仕事をするためには、その準備を30代40代からやっとかなくちゃいけない。

石塚

おそらく安田さんがおっしゃりたいのは、「定年後まで責任持てないなら副業を禁止するな」ってことですよね。

安田

そうなんですよ。

石塚

それはすごい同感です。

安田

なぜ企業は副業を禁止したがるのでしょう?「疲れちゃう」とか「機密を持ち出す」とか言われてますけど。どうしてだと思います?

石塚

なぜ副業を会社は禁止するのか。「1.機密が漏れるのが嫌」「2.生産性が下がるのが嫌」「3.日本人的な感覚として精力が分散するのが嫌」そんな感じじゃないですかね。

安田

でも「情報を漏らす」ということだったら、べつに副業しなくたって漏らす人は漏らすじゃないですか。

石塚

たしかに。漏らす人は漏らしますね。

安田

だから、そんなのは漏らさない手を打てばいいだけ。「仕事への集中力が下がる」とか「副業で疲れちゃう」とかだったら、じゃあ「ゴルフは疲れないのか」「週末に山登りしたら疲れないのか」と反論したくなる。

石塚

うん。あるいは接待での飲みは疲れないのかと。いや、思いっきり疲れてますよと。

安田

そっちの方がよっぽど疲れんだろう!ってことになるわけで。それでいくと、やっぱり今までの習わしというか、要するによく考えないで「何となく反対」してるだけ、という気がしますけど。

石塚

思考停止状態になっていると。

安田

そう。そして多くの会社員は、「会社が禁止してくれることで一安心」している。

石塚

あ~、それ深いですね。「副業をやれる」と言ったところで……

安田

何やっていいか分かんないじゃないですか。

石塚

「副業ってどうやって探せば良いの?」みたいな人が大多数でしょうね。

安田

「副業を認めるよ」ってことは「その代わり自分のことは自分で責任持ってね」ってのとセットじゃないですか。だから「我が社は副業禁止です」と言われると「責任持ってくれるんだろうな」と感じてしまう。

石塚

確かに「どうぞ副業してください」なんて言われても、もし自分が会社員の経験しかない50代だったら「学校行く」とか「資格取る」とかの選択肢しか思い浮かばないと思います。

安田

そうなりますよね。なので企業としては50代60代をリリースして20代30代はキープしたいんでしょうけど、そこは責任上何とかしてもらわないと。生涯面倒見るか、それとも20~30代にガンガン副業のチャンスを与えるか。

石塚

まあ、「50代60代から副業しなさい」と言ったって、学校に行くことくらいしか思いつかないですからね。

安田

そうですよ。

石塚

政府は「定年後は起業しなさい」なんて無責任に言ってますけど、「何も知らんなあ、起業したこともない人が考えるとこうなるんだなあ」って思います。

安田

まったくその通り。

石塚

退職金食い潰して終わりですから。

次回第15回へ続く・・・


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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