時間と期間

時間と期間。
この二つを使いこなしている人は稀である。
二つの特徴を理解していない人は、
時間でやるべきことを期間で考えたり、
期間でやるべきことを時間で考えたりしてしまう。
時間を計るツールは時計。
期間を把握するツールはカレンダー。
二つのツールを使わない人は、まずいない。

にもかかわらず、使い方を間違えている人が多い。
そういう人達にとって、
期間とは「長い時間」という程度の認識でしかない。
1分、1秒、1時間は、時間。
1週間、1ヶ月、1年は、期間。
言うまでもないことだが、
1週間は期間であると同時に、時間でもある。

1ヶ月、1年もまた、同様である。
1週間は168時間。
1年は31,536,000秒。
だから期間=長い時間である、という認識は間違っていない。
間違ってはいないが、その認識には意味がない。
なぜならその認識では、
時間も期間も使いこなせないからである。

なぜ私たちは、同じものを長短によって分けているのか。
それは二つが、同じものではないからである。
金持ちも、貧乏人も、貴族も、庶民も、
我々は等しく時間を与えられている。
平等に与えられた時間を、いかに有効的に使うのか。

時間を有効に使わねばならない、という認識は、
ほとんどの人が持っている。
問題はその先なのだ。
どうやって有効に使うのか、そこが人生の分かれ道なのである。
ここで登場するのが、時間と期間という概念だ。
私たちはこの二つを切り分けて使いこなさなくてはならない。

たとえば文章を書く仕事。
金を稼ぐのに必要なのは時間だ。
コピーライターという職業に何年就いていようが、
実際に文章を書く時間がゼロなら、報酬はゼロである。
一方、同じライターでも、スキルによって報酬は異なる。
1時間当たり千円しか稼げないライターと
1万円稼げるライター。
その違いは期間によってつくられる。

時間で出来ること。
時間では出来ないこと。
期間で出来ること。
期間では出来ないこと。
この四つを正しく理解することが、全ての基本なのである。
たとえば1ヶ月という期間を与えられたとしても、
1時間も空いている時間がなければ原稿は書けない。
原稿を書くために必要なのは時間だ。

反対に、10時間という空き時間があったとしても、
そこで急激なスキルアップをすることは不可能だ。
スキルを高めるためには期間が必要なのである。
1日のうち何時間を時間として使い、
何時間を期間として使うのか。
その二つを切り分けることが、
スケジュール管理の目的なのである。

今のスキルでお金を稼ぐための時間。
それをどのくらい確保するのか。
未来のスキルを高めるための時間。
それをどのくらい確保するのか。

20時間トレーニングし続けても1日では筋肉は増えない。
15分のトレーニングを80日間続けることによって
筋肉は増える。
どちらが正解というものではない。
同じ20時間であっても、
連続する20時間と15分×80日は別ものなのである。
二つの特徴を理解し、使い分けることが重要なのだ。

 


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