「ハッテンボールを、投げる。」vol.54 執筆/伊藤英紀
明けましておめでとうございます。
仕事初めとして、PCに保存していた情報を整理していました。そんな中に、数年前に書いた文章が残っていたので、今回はそれを掲載させていただきます。
コラムを新たに書く手間が省けたのであります。年初から幸先がいいなあ。さて、時間もあいたし、近所の居酒屋で熱燗でもつけてもらうことにします。
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東京の東中野にモレーンコーポレーションという会社があります。
病院内感染対策・感染予防用の製品提供(ドクターや看護師が着用するマスク・グローブ・ゴーグル・エプロン、院内用消毒液など)、ならびに感染対策の問題を解決する総合コンサルティングサービスを提供している希少な会社です。
(※2019年1月現在では、北海道から九州まで全国展開)
病院内に潜んでいたり、外から持ち込まれたりするウイルスや細菌といった病原体に、人々が病院の中で感染してしまうことを防ぐための製品とサービスですね。
モレーンさんのホームページでは、企業と事業内容の表現として端的に、「感染制御・院内感染対策のモレーン」と打ち出しています。
とてもダイレクトでわかりやすい表現です。が、もっとモレーンの高いサービス価値を伝える表現をプラスできないだろうか、と模索してみることにしました。
業界他社の訴求表現を探ってみたところ、ある会社のパンフレットでは「新型感染、パンデミック症候群の脅威」といったちょっとコワイ言葉も踊っていました。
どこか脅されているようだし、こういう言い方で迫られると、「病院にいる人間には病原体が付着している。用心しろ。うかつに近づくな」というネガティブメッセージにも聞こえかねません。
ブランド形成には、ユーザーはもとより、社会からの共感が欠かせません。たとえば「パンデミック症候群の脅威」という言葉では、公共性や社会的包摂性の高いサービスの場合、それが正論であっても共感は広がりにくいのではないでしょうか。
人と人の不信をあおり、人と人のコミュニケーションを遮断してしまうようなニュアンスがふくまれていてはいけない。そう感じました。
モレーンさんの本質的な事業価値は、人間と人間を警戒させ、遠ざけてしまうことの真逆にあるのです。