泉一也の『日本人の取扱説明書』第31回「アニメの国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第31回「アニメの国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 

2兆1527億円。2017年の日本におけるアニメ産業の市場規模である。TVアニメだけを見ても1963年の「鉄腕アトム」に始まり、すでに3000作品以上が放映されている。アニメがこれほど日本で盛況なのはなぜか。

アニメーションの語源はアニマ(霊魂)である。そしてその霊魂を信じることをアニミズムという。すべてのものの中に魂が宿っているという考え方であり、原始的な信仰といわれているが、それは一神教のキリスト教を先進的としたからにすぎない。神道は八百万の神であるから、アニミズムといっていいだろう。

アニミズム的思考が日本人に深く根付いているから、アニメ産業をここまで成長させアニメ文化を世界に広げた。そのアニメ産業における世界一の製作会社はPixarであるが、代表作である「Toy Story」は初の3DCGアニメーション映画として新境地を開いた。Toy Storyはおもちゃに魂を宿らせたまさにアニミズムの原点となる世界を描いている。この映画を見た時、日本の童謡「おもちゃのチャチャチャの世界やないか」と思ったが、Pixar生みの親スティーブ・ジョブズは曹洞宗(禅宗)の乙川弘文僧侶に師事し、イッセイミヤケのタートルネックを愛用(愛着)していたので納得した。ちなみにおもちゃのチャチャチャの作詞は野坂昭如さんで「火垂るの墓」の原作者でもある。

「アニメは幼稚なもの」と感じる大人の共通点がある。それは想像力が乏しいことだ。目に見える物の世界の中だけで生きているので、物から物語を創作できない。「もののけ姫」の物の怪とは、まさにものに宿った悪霊というアニミズムの世界。こういった日本文化の原点からアニメ作品を生み出すジブリは超一流スタジオであろう。

感想・著者への質問はこちらから