なぜ社員は働かなくなるのか

もう何度も申し上げているのだが、
会社と社員はもはや同じ方向を向いていない。
この事実をそろそろ真剣に受け入れたほうがいい。

会社が儲かれば社員も潤う。
会社が育てれば社員はお返しをする。
会社に採用されればそこに骨を埋める。
そういう時代は終わったのである。

ファミリー企業だと言ったところで
現実には家族ではない。
自分の子供に譲るように、
株や資産を社員に無償で与える経営者がいるだろうか。

そこにあるのは無償の愛ではなく、
損得をベースにした雇用関係である。
どんなにバカな息子でも親は可愛いものだが、
赤字を垂れ流し続ける社員が可愛い経営者などいない。
一流大学を出て、大企業の社員をやめて、中小企業の
経営を担うのは、それが親の会社だからである。

損得を超えて、本当の家族のように、
みんなで一丸となって会社を発展させる。
とても素晴らしいスローガンだとは思う。
では翻って自分自身はどうだろう。

自社の利益を捨てて、国民みんなが家族のように、
国のために生きていけるだろうか。
そんなことは誰にも出来ないし、
出来ないことを責められるべきではない。

社員同士も、国民同士も、基本的には他人なのだ。
この現実をなかったことには出来ない。
家族ではなく、親戚でもなく、損得でつながる関係。
それが会社と社員との関係である。

冷めた関係だと言いたいのではない。
対等な関係であると言っているのだ。
どちらが偉いわけでもなく、
どちらに恩があるわけでもなく、
ギブアンドテイクで成り立つ関係。
それが会社と社員だ。

会社と社員のギブアンドテイクにおいて、
最も大切なのはバランスだ。
ギブとテイクのバランス。
もちろん、どちらもギブする以上にテイクが欲しい。
それが本音だろう。

それゆえ会社が求める人材は明確だ。
すなわち、自立している社員、仕事ができる社員、
大きな黒字をもたらす社員、自分の頭で考える社員、
責任感の強い社員、会社の利益を最優先する社員である。

だが冷静に考えてみるとこの関係は
完全にバランスを欠いている。
ゆえに長続きしない。
会社がテイクを優先するように、
社員の側も自分のテイクを優先するからだ。

結果、会社に居て得をする人材だけが残っていく。
すなわち、ぶら下がり社員、仕事ができない社員、
赤字を出し続ける社員、自分の頭で考えない社員、
責任感のない社員、自分の利益を最優先する社員。
これが当然の帰結なのである。

 


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。

 

感想・著者への質問はこちらから