必須スキルの境目

企業が学生に求めるスキルの第一位は、
ここ数年ずっと変わらずコミュニケーション能力である。
どんなにインターネットが普及しても、
人とのコミュニケーションは避けられない。
いや、ネットが普及した時代にこそ
コミュニケーション能力は必須である。

そんな解説を聞くと誰しもつい
「ふむふむ」と頷いてしまうだろう。
コミュニケーション能力。
なんとも便利なことばである。
確かにどのような社会になろうとも、
人とのコミュニケーションは不可欠だ。

人に認知されること。
人に興味を持ってもらうこと。
人に必要とされること。
無人島にでも行かない限り、
人との関わり方は人生のクオリティーに直結する。
だがここに、大きな落とし穴があることを
見落としてはならない。

多くの人が見落としがちな落とし穴。
もちろん企業の採用担当とて同じである。
それはつまり、
コミュニケーション能力とは何なのかという定義だ。
試しに採用のプロである人事担当者に聞いてみるといい。
コミュニケーション能力とは何なのか。
端的にお答えくださいと。

ここで長々と答える人は
その定義が出来ていない人である。
長く解説しなければ説明できないようなものは
定義とは言わない。
少なくとも100文字以内。
聞き出すことができたならその定義を比べてみて欲しい。
同じものがないという事実に気がつくはずだ。

人と会話する力なのか。
相手の心を察する力なのか。
文章で伝える力なのか。
文章以外で伝える力なのか。
文脈を読み取る力か。
それ以外から読み取る力か。

その全てである、と答えるしかないだろう。
だが現実問題として、
全ての能力を兼ね備えた人材などいない。
我が社においてコミュニケーション能力とは何なのか。
これを定義していない会社が、
お目当ての人材を採用することは不可能である。

人とのコミュニケーションは
生きて行く上での必須スキルである。
この事実は変わらない。
問題はその中身が時代と共に大きく
変化しているということ。

知らない人と物怖じせず会話できるスキル。
粗相なく目上の人と敬語で話せるスキル。
それがいまの時代にどれほど必要だろう。
デジタル社会においてそのスキルは
ほとんど役に立たない。

これから最も必要とされるのは、
コンテンツを通じて興味を喚起し、
多くの人を惹きつける能力である。
ネットの中に強烈な磁場をつくり出す力。
クリエイティブこそが、
新時代の必須スキルなのである。

 


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