集合知の弱点

人間の人間たるゆえん。
他の動物を凌駕する最大のポイント。
それが集合知である。
千年を超える知恵と世界中の情報を集積し、
享受できる仕組みを人間はつくりだした。

かつてはそれが言葉や文章によって伝承され、
今やそれはデータによって転送される。
あらゆる集合知のデータ。
それをインストールすることによって、
何でもない普通の人間がスーパーサイヤ人になる。

この集合知を余すところなく享受してきたのが
先進諸国であり、ほとんど享受できなかったのが
各地に残る先住民たちである。
独自の文化や価値観はさておき、
そこに圧倒的な力の差があることは事実だ。

侵略され、植民地化された側は
たまったものではないが、
それによって莫大な集合知を得たことも
事実なのである。

国家の運営も、会社の経営も、商品の開発も、
すべて集合知の恩恵を受けている。
法律は時間とともに練られ整備されていく。
会社経営は過去のデータを元にどんどん進化していく。
商品力は技術の蓄積によって高められていく。

集合知を使わないという選択肢は現代人にはない。
それはもはや不可能なことなのだ。
だからこそ知っておかなくてはならない。
集合知の弱点。
それがどこにあるのかということを。

たとえば先祖がたどり着いた法治国家という形態。
たとえば創業者が考え出した素晴らしい経営理念。
本質的にそれらは非の打ち所なく正しい。
正しいからこそ選ばれ、
そして多くの人に伝承されてきたのだ。

弱点はこの伝承という部分にある。
伝承していくうちに手段が目的化するのだ。
法治国家は国民のために考え出された仕組みだ。
つまり法律は国民を幸せにするための手段にすぎない。

だが時間とともにそれが目的化する。
法律を遵守することが
国民の幸せより優先されてしまうのだ。

会社も同じである。
会社は社会にとって必要な事業を行うための手段。
企業理念もそれを実現するための手段にすぎない。
だが時間とともにそれが目的化する。
会社の利益や存続が第一目的となり、
事業や理念がそのために利用されるようになる。

国、会社、宗教、法律、伝統、などなど。
あらゆる組織において、手段が目的化されていく。
戒律や、法律や、伝統を守ること。
組織や、売上や、規模を拡大し続けること。
それが目的化してしまうのだ。

集合知によって手段は進化し続ける。
だが目的は時代によって変化する。
本質を忘れ手段が目的化したとき、
人は単なる集合知の奴隷となる。

 


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1件のコメントがあります

  1.  含蓄に富む視点のコラム、ありがとうございます。
     目的というか、その人や組織のありかたや目的、存在意義の変化や変動が問われているのだと思います。例えば、
    (1)企業(事業)は、永遠に存在するのが正しいのは本当か?
    (2)働かなければ生きていけない時代から、そんなに働かなくても行けていける時代になり、「働くざる者、食うべからず」は、絶対的な真理であるのか?
    等々、疑うことが多々あります。
     気付きを頂き、ありがとうございます。

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